オフラインストレス障害

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あなたに「オフラインストレス障害」の症状はあるか?

ネット中毒もしくは IAD(Internet Addiction Disorder:ネット中毒性障害)の話は良く聞くだろう。中国、そして米国全土にも、患者救済のための宿泊施設や更生診療所が設置されている。

通常の生活(仕事や人間関係など)に支障を来すほどインターネットを利用しすぎるとネット中毒と診断される。ネット中毒は実在の病名だ。例えば、Newsweek ではネット中毒で住む家を失った男性に関する記事を伝えている。

一方、筆者はこれと関連するある疾患に気付いた。定着した病名はまだない。ここではとりあえず「Offline Stress Disorder」(OSD:オフラインストレス障害)と呼ぶことにする。これは、インターネットを使わないこと、もしくはインターネット回線が利用できないことを知って精神的もしくは感情的に不安定な状態になるという病気だ。

どこが違うのだろう? OSD は、通常の生活に対する支障の有無にかかわらず存在する不安感である。必ずしも人を衰弱させるものではない。そして、はるかに一般的なものだ。

例えば、筆者の周辺には深刻なネット中毒患者は1人もいないはずだ。しかし、筆者の知人の半分は OSD にかかっている。実際(もしあなたが技術に関心のある有職者ならばという話にはなるが、この Web サイトをご覧になっているのだからそうだろう)、あなたもネット中毒ではないだろうが OSD にはかかっているかもしれない。

また、これは筆者が想像で述べていることでもない。Virgin Media が1,000人の英国民を対象に実施した調査によると、その3分の1は携帯電話やインターネットが接続不能になるとストレスを感じるという。そして3分の2は、インターネットにアクセスできることが分かっていると「より安心できる」と回答した。

また、英国人よりも米国人の方が困窮している。2008年に Solutions Research Group (SRG)が実施した調査(PDF)によると、定期的ではないものの、アメリカ人の41%がインターネットに接続できないことで不安を感じ、さらに27%が「強い」もしくは深刻な不安を訴えている。

この調査は回答者に対し、インターネットに接続されていないことで感じる気持ちを説明するよう求めた。彼らの回答には「狼狽」、「パニック」、「自由の喪失」、「放心状態」、「無力」、そして「空虚」というものまであった。

筆者もちょっとした独自「調査」をしてみた。ソーシャルネットワークの友人に OSD 症状の有無を尋ねたところ、多くがこの障害があることを認めたのだ。ある友人は、前日の嵐でインターネットにアクセスできなくなった際に「空虚」や「締め出された感じ」があったという。また、もう1人は「目の前の世界が急に消滅する恐怖」を感じたという。

友人の1人で、IT 系ラジオ番組でパーソナリティーを務める Carey Holzman 氏には、自分が OSD であることを発見した面白い経緯を聞いた。「バーニングマンのイベントを見に行ったとき、ネットに接続して連絡を試みるのに必死になり、より良好な電波を求めて RV 車のルーフにまでよじ登った。ノート PC を手に持って RV 車のハシゴを上るのは言葉で言うより容易ではない。そのとき、自分が病気だと認識した…(笑)」というのだ。

筆者はここ最近 OSD のことで頭がいっぱいだ。そして、思いも寄らない人がこの病気にかかることに気付いた。

当然、OSD からはニュース速報や最新トレンドを知ることが仕事だったり喜びだったりする技術マニアやニュース中毒者(筆者は図らずも両者である)などの人を思い浮かべる。

しかし2年前から、筆者は技術嫌いの人々でさえも OSD になることに気付いた。オンラインであることを不安に感じていた人々が、今はオフラインであるときに同じ気持ちになってしまうのだ。

これは2つのトレンドが原因だと思っている。iPhone と Facebook だ。ただ、理由はそれぞれに大きく異なる。

● iPhone が OSD を引き起こす理由

携帯電話でインターネットにアクセスすることは何年も前から可能だった。iPhone が違うのは高解像度の大画面と iPhone アプリケーションの魅力の組み合わせだ。iPhone は Facebook や Twitter アプリケーション、もしくは数千種類の iPhone アプリを使うことでインターネットからのデータ取得をかなり容易にする。

iPhone で最も魅力的な「アプリ」の1つが App Store アプリそのものだ。iPhone を持ち運ぶ人ならだれでも、8万種類(今週にはもうすでに数が変わっているかもしれない)のなかで知らない iPhone アプリがいくつかあっても間違いなくそれを喜んで使うだろう。

言い換えれば、iPhone は(何よりも)接続用マシンになったのだ。われわれは、四六時中接続されていることに慣れてしまい、この環境への順応が接続できないときの不安につながっているのだ。

● Facebook が OSD を引き起こす理由

筆者は約1年前、この分野に関する「Social Networking:What Are‘Friends’For?」(SNS:「友だち」は何のため?)という記事を書いており、そのなかで、Facebook などのソーシャルネットワーキングサイトの最大のメリットは、人間関係の質ではなく量を高めることだと述べた。

現実の世界では、せいぜい数百人程度しか真の関係は築けない(相当な社交家でも200人程度だろう)。なかには10人、あるいはそれ以下としか付き合いがない人もいる。

しかし、Facebook では数千人の「友だち」と連絡を取り合うことができる。おっ、元同僚のところに最近双子が生まれた、弟夫婦が「Couples Retreat」を観に行くようだな(きっと後悔するぞ)、高校時代の友人がマラソン出場に向けてトレーニングしているぞというように、ホームページをチェックし、友人のプロファイルをたまにざっと閲覧するだけで、だれがだれと何をしているのかがすぐに分かる。

ごくありふれたことが人と人を結びつける。ソーシャルネットワークは、われわれが生まれながらに持つ強い願望である社会における結びつきを数に増殖させる。だがその結果として、その雑談に参加できなくなったときにストレスを感じる人もいるのだ。

あなたは OSD にかかっているだろうか? もしそうならば、それによりどのような感情になり、どのようなことが起こるだろうか。ぜひ教えていただきたい。

さて、申し訳ないが iPhone で Facebook をチェックしなければならないのでここで失礼する。どうしても今すぐでなくてはならないのだ。