身勝手な主張には、 甘やかさず、受容的な態度で向き合う

「新人ワガママちゃん」の身勝手な主張は、 甘やかさず、受容的な態度で向き合う
 連載初回は、「ワガママちゃんチェックリスト」、第2回は、「新人ワガママちゃんの事例」を取り上げました。3回目となる今回は、「ワガママちゃん」への具体的な対処法について解説します。
 自分にとって理不尽なことに耐えられず、失敗をしても内省することがないワガママちゃんは、「会社が悪い」「クライアントが悪い」と常に他罰的です。しかし、自分では、上司や先輩に対して「理不尽な主張」を、それを当然のこととして行います。
 もし、「新人は少なくとも1年間は、当初の配属先で経験を積む」という原則がある会社で、入社1年目のワガママちゃん部下が、半年くらい経って、「この部署はそもそも希望の部署ではありませんでした。この部署で長く働くつもりはありません。1日でも早く希望の部署に異動させてください」と直訴してきたとしたら、あなたはどう対処しますか?
 あまりにも理不尽なワガママぶりに私たちはついイラッとしてしまいます。しかし、このときに彼らに対して感情的になってはいけません。感情的な言動は他罰的な彼らの「攻撃性」に点火することになりますから、ワガママはさらにエスカレートして、ターゲットを上司や先輩社員だけでなく、パワハラだ、労災だ、民事訴訟だ、と事態が混乱拡大することも、決してまれではありません。
【ワガママちゃん対処法1】
組織に適応できるように、規範を教える
 ワガママちゃんへの対処の原則は、彼らの成長を支援しようとする姿勢を崩さないことです。そのためには、彼らを受容しつつも、毅然とした対応を行うことも大切です。
 上記のような原則を無視した、「1日も早く異動させてほしい」という主張に対しては、組織のルールに照らして、「それは無理」「それは通らない」とはっきり伝え、彼らが組織の中でちゃんとやっていけるようになるための規範意識が身につくように対応することが重要になります。
大人として未成熟なだけで、人格が歪んでいるわけではない彼らは、規範に対する理解力はあるので、しぶしぶかもしれませんが、上司であるあなたの毅然とした真っ当な対応に従うでしょう。
【ワガママちゃん対処法2】
受容・傾聴・共感の3ステップを実践する
 もう1つの対処は、「カウンセリングマインド」の3ステップを活用することです。彼らを甘やかすような安易な同意を与える必要ありませんが、まず彼らを情緒的に受け止めることで、ワガママちゃんの葛藤からくる攻撃性にワンクッション差し挟み、気持ちのいらつきを低減することが重要なのです。
1 受容
 これは本人のワガママを全部容認しろなどということではなく、ただ単に物理的に「聴く耳を持て」ということです。彼らのワガママな言動や要求に対して、初めから門前払いしてはいけません。5分でも10分でも構いません。まず自分のスケジュール帳を開いてください、そして彼らに
 「今日の会議後、5時から15分だけだが君の話をじっくり聞く時間を取るよ」
 「今日は忙しいので無理だけど明日朝8時半から9時まで話を聞こう」
と、彼らに自分の時間枠を明確に与えることです。こうすることで実は彼らは安心感を覚えるのです。
2 傾聴
 時間を30分程度に限定して、ひたすら彼らの言い分をまず聴いてください。コメントすることなく、批判することなく、アドバイスすることなく、ひたすら聴くことが重要です。そのためには「聴く技術」が必要になります。皆さんもリスナー訓練などを受けているかもしれませんが、聴くための「相の手」として次の言葉を使ってください。
「なるほどなるほど」
「そうかそうか」
「そういう風に考えていたんだな」
  もし yesかno で答えを求められても決して判断を示してはいけません。
 このようにひたすら聴くことに努めてください、そして最後はオウム返しのテクニックです。本人の疑問型をそのままオウム返ししてください。
「新人ワガママちゃん」の身勝手な主張は、 甘やかさず、受容的な態度で向き合う
 逃げのように感じるかもしれませんが、違います。このときに彼らの感情の中に起きている現象は
「課長が一緒になって考えてくれている」
「共感してくれている」
というポジティブな心の動きなのです。実際は決して論理的に彼らに同調しているのではありません。まず情緒的に対応することで、彼らの中に上司に対する「陽性の感情」を形成しておくこと、そのような下地を作ってから、徐々に論理的に話していくこと、この流れを忘れないようにしてください。
3 共感の気持ちを表現すること
 そして、最後の締めに、
「君の言いたいこと、君がいらいらしてる気持ちは良くわかったよ」
と言葉に出してください。このようなやりとりをする時間を繰り返し持ってください。そうすることで、彼らは上司に対して信頼感を持つようになります。繰り返しますが、彼らは人格が歪んでいるのではありません、ただ単に未成熟なのです。ですから、まず、自分を受け入れ理解してくれる存在を求めているのです。このような共感的理解が成り立っている関係を、私の恩師であり、日本で「いのちの電話」の創設に尽力された稲村博先生(元筑波大学教授、故人)は、「心の絆」と呼びました。
 彼らの適応力を高める視点から組織のルールにかかわることに対しては毅然と対応し、また、彼らの話を受容的態度で聴き、共感的理解を示すことで、ワガママちゃんのソーシャルスキルも向上していきます。
 ワガママちゃんの成長には時間がかかるものです。彼らを大人にするためには、根気よく彼らとつきあっていく必要があります。その役割をあなたが担っていると自覚すれば、次第にワガママちゃんに向き合えるようになっていくでしょう。