ディスコミュニケーション

好意や善意は,つねに肯定的に機能するとは限りません。 本書では,ソーシャル・サポート研究の理論的枠組みに基づいて,好意や善意のディスコミュニケーションの多様なパターンが提示され,ディスコミュニケーションの背景やそのありようが実証的に論述されています。 そして,好意と善意のディスコミュニケーションの生起にはコミュニケーション当事者の関係性,そして外部の第三者の影響が大きいことが明らかにされ,好意や善意のコミュニケーションやディスコミュニケーションを開かれたシステムとして捉えることの意義が論じられています。 
【目次】
第1章 序論:好意と善意の心理学
 第1節 はじめに
 第2節 好意・善意をめぐる心理学的アプローチ
 第3節 ソーシャル・サポート研究の始まりとその後の量的展開
 第4節 ソーシャル・サポート概念の多様化と心理学化
 第5節 ソーシャル・サポート研究の落とし穴
 第6節 発達心理学におけるソーシャル・サポート研究
 第7節 ディスコミュニケーション
 第8節 サポート知覚のズレと見えないサポート論
 第9節 サポートの否定的効果と見えないサポート論
 第10節 本論文の基本的立場と目的
 第11節 本論文の構成と各章の焦点
第2章 研究1:否定的に受け取られるサポートの記述
 第1節 目的
 第2節 方法
 第3節 結果及び考察
第3章 研究2:否定的反応をもたらすサポートの特徴
 第1節 目的
 第2節 方法
 第3節 結果及び考察
第4章 研究3:送り手と受け手との間のサポートの知覚のズレ
 第1節 目的
 第2節 方法
 第3節 結果及び考察
第5章 研究4:サポート受領の発達
 第1節 目的
 第2節 方法
 第3節 結果及び考察
第6章 方法論的観点から見たサポート研究
 第1節 前章でのまとめ
 第2節 人を測ることの意味
 第3節 妥当性概念の評価
 第4節 ソーシャル・サポート研究の方法論的課題
第7章 研究5:中期的スパンでのサポート・コミュニケーションのズレ
 第1節 目的
 第2節 方法
 第3節 結果及び考察
第8章 結論:現実生活に根差したソーシャル・サポート論に向けて
 第1節 好意と善意のディスコミュニケーション
 第2節 見えないサポート論の適用範囲
 第3節 二者関係から開かれた好意と善意
 第4節 好意・善意の文脈依存性、そして好意と善意の文化的実践研究へ
 第5節 おわりに:結果としての相対主義とほどほどのヒューマニズム