ロナセン への期待と不安

統合失調症治療薬 ブロナンセリン 商品名ロナセン
受容体選択性が高い新規SDA
 2008年1月25日、統合失調症治療薬のブロナンセリン(商品名:ロナセン錠2mg、同4mg、同散2%)が製造承認を取得した。承認された用法・用量は、「成人1回4mgより開始し、徐々に増量する。そして維持量として1日8mg~16mgを2回に分けて投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが1日最大量は24mgを超えないこと」となっている。

 統合失調症は、生涯発病率は1%ほどとされている。発症初期には、頭重感、倦怠感、易疲労感、睡眠障害などの身体的愁訴で医療機関に受診する場合が多いが、その後、陽性症状(幻覚・妄想・興奮など)、陰性症状(感情鈍化、意欲低下、無関心など)、不安・抑うつといった多彩な症状が現われてくる。

 治療では、従来から薬物療法が中心となっており、長年、ハロペリドール(商品名:セレネースなど)をはじめとした定型抗精神病薬(第一世代抗精神病薬)が用いられてきた。しかし定型抗精神病薬は、統合失調症の陽性症状には有効性が高いが、陰性症状には効果が低い場合があることが指摘されていた。また副作用として、錐体外路系症状(急性ジストニア、アカシジア、遅発性ジスキネジアなど)が発現した。これに対して、1990年代後半から登場したリスペリドン(商品名:リスパダール)をはじめとする非定型抗精神病薬(表1)は、陰性症状にも効果が高く、錐体外路系症状などの副作用も比較的少ないことから、統合失調症治療に広く使用されるようになっている。

表1 主な非定型抗精神病薬

■SDA(セロトニン・ドパミン遮断薬)
  リスペリドン(商品名:リスパダール)、塩酸ベロスピロン水和物(商品名:ルーラン)

■MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)
  オランザピン(商品名:ジプレキサ)、フマル酸クエチアピン(商品名:セロクエル)

■DSS(ドパミン部分作動薬:ドパミン・システム・スタビライザー)
  アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)

関連記事はここ
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-04-07-3

上記三種SDA、MARTA、DSSについても、まったく別の薬ではなく、
たとえば、SDAを用いて、その使い方を工夫することで、
DSSに似た効果を期待することもできる。

 今回承認されたブロナンセリンは、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体に対して強い遮断作用を有するSDA(セロトニン・ドパミン遮断薬)である。これまでの臨床試験結果などから、ブロナンセリンは、ほかのSDA(例えばリスペリドン)よりも受容体選択性が高く、SDAの最大の問題点であった高プロラクチン血症(性機能障害など)や、定型抗精神病薬に見られた錐体外路系の副作用の発現が少ないといわれている。

 ブロナンセリンは日本で創薬された新規構造をもった薬剤であり、今後は、統合失調症治療で広く使用されていくことが予想される。使用に際しては、薬剤の有効性や安全性が食事の影響を受けやすく、食後投与が望ましいとされているので注意したい。食事との関係はエビリファイなどでも観察されていることで、規則正しい食事と服薬を原則としたい。

また、副作用(高プロラクチン血症や錐体外路系症状など)が皆無ではないことを認識した上で、投与量は必要最小限となるよう調整し、投与後の患者の状態を十分に観察しなければならない。

販売量    ロナセン錠2mg  ロナセン錠4mg  ロナセン散2%

一般名    ブロナンセリン (blonanserin)

効能・効果 統合失調症

用法・容量 通常、成人にはブロセナンリンとして一回4mg一日二回食後経口投与より
        開始し、徐々に増量する。維持量として一日8mg~16mgを2回に分けて
        食後経口投与する。
        なお、年齢、症状により適宜増減するが、一日量は24mgを超えないこと

製造販売元 大日本住友製薬株式会社

心配な点はいろいろあるらしい。個別にコメントする。

太る……糖代謝に影響は少ない。ただ、不調のときには運動量が少なくなるので、その結果として体重は増加する傾向になることが多い。

プロラクチン・性機能障害……男性の場合にはあまり影響はない。女性場合にも、プロラクチンをコントロールすることもできるので、使えないわけではない。リスパダールやスルピリドでプロラクチンが動くが、対処できるので心配しなくていい。

眠気……体質による。眠気が出るなら、夜にまとめて使えばよい。眠れなくなるなら、昼に使えばよい。体内での代謝時間と代謝経路を考慮して、いろいろと工夫ができる。これもクリアーできる。

頭の回転が鈍くなる……これは表現が微妙で、陽性症状部分の頭の不必要な回転は抑えたい。一方で陰性症状部分の必要な頭の回転は促進したい。陽性症状にはロナセンのD2ブロッカー部分がよく効く。陰性症状部分にはセロトニン・5HT2A2部分が効くので、これも改善が期待される。

リスパダールとの比較……副作用が少ない。ロナセンもセロトニン部分よりもドーパミン部分によく効く薬である。そこで、DSAなどと呼んで、セロトニン・コントロール優位の印象のあるSDAとの違いを区別しようとしている。

陰性症状……セロトニン・5HT2A2部分への効果があり、これはジプレキサ、セロクエル、リスパダールとは少し違い、ルーラン、セディールに近い。使用量にもよる。また、体内での二次代謝産物の影響もある。単純ではない。

初期症状である幻覚・妄想や意欲低下などを軽減する……ドーパミンD2ブロック作用でかなり期待できる。

ロナセンはルーランの後継……会社は同じだが、そうともいえない。

ルーランで呂律が回らなくなってきた……使用量と開始時期の薬量調整による。調整可能。

朝の眠気だるさ……薬によるものか、気分変動によるものか、生活リズムによるものか、見分けつつ、対処する。調整可能。

頭がボケないか……24mg を超えない範囲と書かれていて、一方、薬剤は、2ミリ錠と4ミリ錠だから、かなり細かく調整できることになる。「ボケ」ることの内容を吟味して対処。

リスパダールでボケる人もいればボケない人もいます……薬量と種類を考慮すれば防止できる。

エビリファイも人によっては副作用がないどろか賦活作用で意欲が戻ったり……薬量と、飲む時期にもよる。数カ月前に飲んだ薬がやっといい効果を発現しているということもある。数カ月前に中止した薬の影響が今頃になって現れているということもある。

ルーランで呂律が回らなくなった。エビリファイ、リスパダールがだめで、またルーランにしたら呂律には問題なくなった。……これは実際あることで、その間に治療が進展したということだ。体質が変わりつつあるのだろう。

一般に、まず、統合失調症と広く言うが、様々な病型が含まれている。ある人の統合失調症と別の人の統合失調症は同じではないかもしれない。また、発病からの時期の違いもある。そして体質の違いもある。
それらを一緒にして論じるのは、あまり得策ではない。違いを無視して何か一言で結論を出すのは、やめよう。

個人的ないろいろな事情もある。体質、環境、仕事、家族の意見、それまでの経験、思い込み、食生活の癖、睡眠の癖。
それらを全体的に考慮して、考える。
単に「眠気が強い」と言っても、どのような状況なのか、病気の詳細と経過、体質、環境、その他、いろいろと総合する必要がある。

短期決戦ではないのですから、年単位で、取り組むことが必要である。

一日一回単剤投与を目指しているが、いろいろと工夫していこう。

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2008-6-18
個人的には
smapg-time-delay-model(http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-04)で

中脳辺縁系のドーパミン(D2)を遮断して陽性症状を改善するというのが12.の経路、
中脳皮質系のセロトニンを遮断して、中脳皮質系のドーパミン(D2)が出やすくなるというのが11.の経路

という両面でロナセンがぴったりなので、
自我障害初発型に使ってみたいと思っている。