「エビデンスがある」とはどういうことか?

「エビデンスがある」とはどういうことか?

エビデンスはどのようにして出されているのか?

 エビデンスとはいきなり出されるものではありません。前にも説明したように、エビデンスとは科学的根拠、つまり実験の結果を基に「根拠がある」と考えられる事柄をさしています。様々な研究、実験の結果を基にエビデンスは作られているのです。

 エビデンスを出す研究にはいくつかの方法があり、その方法によって「エビデンスレベル」が変わってきます。この「エビデンスレベル」とは、信頼度と言い換えてもよいでしょう。「この治療法は効果的だ」と考える前に「そのエビデンスはどのような研究から出されたのか」を知ることはとても大切なことです。

 これから、研究の種類とその信頼度について説明します。そして、その種類によってエビデンスレベルも違います。これから、いくつかの研究方法について説明します。

研究の種類と信頼度

1.ランダム化比較試験

 RCTと略されることもあります。対象をランダムに選び、介入(薬・検査・看護など)を行うグループ(実験群)と介入を行わない群(対照群)にわけ、評価を行う方法です。

2.コホート研究

 コホートとはもともと古代ローマ軍の一連隊をさす言葉で、集団のことです。
ある集団(コホート)を追跡し、コホート内の人々の間でイベント発生(喫煙、運動、食生活など)がどのように異なるのかを調べて、その違いでその後の経過がどうなっていくかを見ていく方法をコホート研究、特に前向きコホート研究といいます。
 過去の記録を用いてコホート内の人々のイベント発生を見ていく方法を後ろ向きコホートといいますが、多くの場合「コホート研究」と言われたら前向きコホート研究のことをさします。

3.症例対照研究

 症例(患者)と「なるべく性別や年齢、住所などが似ている、病気でない対照」の2群を選び、過去にその病気の要因となる状況にどれくらい当てはまっていたかを調べる方法です。

4.記述的研究

 「この患者さんにこのような治療を行ったら回復した」というような、データを記述する方法です。この研究は原因を明らかにする目的で行われた研究ではありませんが、これらの研究をまとめて分析的研究が行われることがあります。

これらのさまざまな研究によってエビデンスが作られています。エビデンスレベルは

  • (1) ひとつ以上のランダム化比較試験
  • (2) ひとつ以上の非ランダム化比較試験
  • (3) ひとつ以上の分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
  • (4) 症例報告などの記述的研究
  • (5) 患者データに基づかない専門家・委員会の報告や意見

の順で高く、高ければより信頼性が高いと考えられています。

point
  1. エビデンスを出すための研究にはいくつかの方法があり、その方法によりエビデンスのレベルが違う。
  2. エビデンスレベルが一番高いのはランダム化比較試験である。