検査カフェへいらっしゃい

検査カフェへいらっしゃい
 健康診断を受けていますか。病気になる前に不調を見つけ、治療を受けたり生活習慣を改めたりして、健康に1年を過ごしたい。
 気になる項目 券売機でポン さっと採血
 チャンポンやラーメンの食券でも出てきそうな自動券売機だが、メニューは料理ではない。「血糖値」「コレステロール」「貧血」といった項目だ–。
 熊本市の熊本大病院には、気軽に血液検査を受けてもらおうと設置された「検査カフェ」の券売機がある。「病院の食堂にあるのと同じです」。中央検査部技師長の池田勝義さん(53)が説明すると、検査に訪れた同市の主婦、千村美樹さん(42)は「へえー」と驚いた。
 千村さんが買ったのは「血糖値が気になる方 800円」の券。昨年9月の人間ドックで初めて糖代謝に異常が出たため、気になっているという。
 券を受付に出し、申込書に氏名や住所のほか、「医療機関で診察を受けていますか」といった問診に対する答えを書き込む。次に検査室で採血。券の購入から10分程度で終わった。
 1週間後に郵送された結果報告書には、「血糖レベルが基準値をわずかに上回っており、注意が必要」とあり、甘いものやでんぷん質を取りすぎないようにして、適度な運動をするようアドバイスされた。「気になる項目だけ調べられるし、料金も思ったより安かった。糖尿病にならないよう生活習慣を改善したい」と千村さんは話した。
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 カフェは、熊本大教授で同病院中央検査部長の安東由喜雄さん(57)が、「健康について知る場を提供したい」と考案した。2009年2月の設置以降、利用者はリピーターも含めて延べ約1640人。「アメリカは検査費用が高い」と帰国の際に来る人や県外からの観光客もいるという。
 検査データは、臨床検査専門医や検査技師らが週1回開く判定会議で検討する。異常が見つかる人は約6割に上る。前立腺がんや重い貧血と分かり、治療につながったケースも。「病気が進行する前に食い止めて、医療費の削減にもつなげたい」と安東さんは話す。
 メニューは13種類
 検査カフェのメニューは13種類。「健康が気になる方 1800円」は、企業や自治体の健診と同じで、基本的な18項目。脂質異常や肝臓、腎臓の機能低下、病気による貧血などがないか調べる。
 「お酒の飲みすぎが気になる方 1200円」は、肝臓や胆のうの機能に絞った5項目。「痛風が気になる方 500円」は尿酸など3項目だ。このほか「中性脂肪 200円」「心電図 1400円」など12種類のオプションもある。
 受け付けは月曜から金曜午前10時-午後4時。健康保険証や予約は必要ない。結果を受け取った後、説明を受けたい人は、毎週火曜午前10時半-正午の「検査『知』外来」を予約できる。問い合わせは生理機能検査室(096・373・5694)へ。
 自治体の検診 上手に活用を
 自治体の健診やがん検診も、上手に活用したい。
 市町村が行う特定健診は、国民健康保険に加入している40-74歳の人が対象。福岡市は500円、熊本市や佐賀市は1000円など低価格で、身体測定や血液、尿などの検査が受けられる。
 対象外の加入者のために、熊本市は「30代健診」(自己負担額1000円)を行っている。人間ドックの割引にも使える。午前8時-午後9時、年中無休のひごまるコール(096・334・1507)へ。
 福岡市は今年度まで、「ヘルスアップスクール」(同2700円)で18-39歳の人に健診や体力測定、運動指導をしている。託児付き。各区保健所へ。
 佐賀市は、特定健診では検査項目が足りないという人のために、集団がん検診などを組み合わせた「ミニドック」(同3000円)を設けている。山口県宇部市では、定員250人が1万2000円程度で脳ドックを受けられる。
 窓口が分かりにくいため、市役所などで健診ガイドなどの資料をもらい、説明を受けるのも良さそうだ。
 私の検診
 ◆「リパーゼ」も測って/九州大病院の准教授で膵臓専門医の伊藤鉄英さん(53)
 職場の検診に加え、膵臓で作られる「リパーゼ」という脂肪分解酵素の量を独自に調べています。これが基準値より多くても少なくても、膵臓に異常がある可能性があるからです。
 一般的な検診では、炭水化物を分解する「アミラーゼ」という酵素しか測りませんが、それでは膵臓の状態は必ずしも分かりません。リパーゼを検診項目に加えた企業では、膵炎が見つかり早期治療につながった人もいます。油ものを食べると胃がもたれる、お腹や背中の左側が痛む場合は、病院でリパーゼを測ってもらってください。
 過度の飲酒やストレスは膵臓を痛めます。やけ酒はいけません。私自身、飲むのは早めに切り上げて好きなカラオケに行き、日付が変わる前に帰宅するようにしています。
 ◆半年に1度胃カメラ/福岡市のNPO法人「がんを学ぶ青葉の会」代表の松尾倶子さん(65)
 15年ほど前にスキルス性胃がんと診断され、胃の5分の4を切除しました。会社の検診で年に1度胃カメラ検査を受け、異常なしだったのに、進行がとても早かったようです。
 現在は半年に1度、かかりつけの内科で胃カメラと、血液検査で腫瘍マーカーの数値を調べています。レントゲンやCTなどによる被爆を恐れて検査に消極的な人もいますが、私は必要なら受けるようにしています。
 病気をきっかけに、油や塩分の少ない粗食を心がけ、ジョギングをしています。ただ、会食の時は気にせず何でも食べ、悪天候の日や気分が乗らない時は無理してまでは走りません。気楽に構え、「こうしなければ」と自分を締め付けないようにしています。