誰も傷つけず、傷つかずに、生きて行って欲しい。

子供に向けた文章採録。

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「10歳の長男へ
インターネットをやってもいい。
一つだけ憶えておいて欲しい事がある。
それは、インターネットで誰も傷つけないで欲しいし、お前も傷つかないで欲しいということだ。
ディスプレイ越しに見る言葉は、口から発せられた言葉と違い、時に心に深く深く心に突き刺さる事がある。
何度でも反芻でき、何度でも傷つく事が出来る。
時に話す言葉よりも残酷で、何度でもお前の心の傷をえぐるだろうし、お前の何気ない言葉が相手の心をえぐるだろう。
インターネットの言葉は、時にお前の心を壊し、誰かの心を壊すかもしれない。
一度発した言葉は永遠にネット上を彷徨うのだ。
日常生活以上に、気をつけて欲しい。
そして、想像力を使うんだ。
誰がどういう思いでその言葉を発したのかを考えて気持ちを読み取り、言葉を返す必要が最上と判断するのなら、想像力を駆使して相手に言葉を返してもいい。
だが、謙虚さを忘れてはいけない。
時に雄弁は銀、沈黙は金なりだ。
何も言わない事が勇気である時もある。
そして、想像力を駆使して、自分の心を守れ。
不用意に、無条件に、誰かの言葉で傷つくな。
言葉の表面上の意味だけを捉えて、安易に傷つくな。
想像しろ。
この広大なネット上の世界に何が渦巻いているのか、思いを馳せろ。
父さんはいついなくなってしまうかもわからない。
そうしたら、この広い世界で、お前は一人で生きていかなくてはいけない。
考え抜いて、生き延びるんだ。
誰も傷つけず、傷つかずに、生きて行って欲しい。」

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ディスプレイ越しに見る言葉は、口から発せられた言葉と違う
日常生活以上に、気をつけて欲しい。
そして、想像力を使うんだ。

という部分が大切な教育になっている。

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考え抜いて、生き延びるんだ。

誰も傷つけず、傷つかずに、生きて行って欲しい。

この部分は考えさせられる。

傷つけ、傷つけられ、その果てに、なにか目指す境地があるのでもない。
そんな時代は終わったらしい。

むしろ、傷つけず、傷つかずに、生きていくことが目標という。

これが生存を保証された豊かな社会の自己愛のあり方であり、
シゾイドタイプの心理が表現されていると思う。

子どもたちを取り巻く現状を生き抜くにはおそらくこのようなことが必要と親は感じていて、
そのことを表現した文章だと思う。

共有の理想や価値観は消滅し、
残っているのは裸の自己愛と家族愛。
それでいいと思うし、その範囲内で何とかうまくやっていきたいものだ。