もうすぐ桜だというのにちっともうきうきしないのは

梅がどうなったかもすっかり興味が無くなって、もうすぐ桜だというのにちっともうきうきしないのは、地震のせいなのか、歳のせいなのか。沈丁花の香りも過ぎたような気がする。スーパーの営業時間がすこしずつ長くなり、駅前では歌手の卵が「なごり雪」を歌っていた。あれは、去年よりずっと綺麗になった女を見送るけれど、今年はもっと綺麗な女と出会うぞと密かに思っているのだろう。だから、あっさりと別れられるのだと思う。落ちては溶ける雪を見ていたという一節は、この女を見送って後悔する確率と、新しい女に出会う確率を感覚して、新しい女との未来ににうっとりしているのだと思う。そうでなかったら目の前の女を離さないはず。というのでもないか。