アルコールで頭がしびれたとき

アルコールでまた失敗しましてねという人は結構たくさんいる

新橋で仕事をしているのだから
夜になれば打ち合わせをしながら飲むのは当然で
アルコールそれ自体は肝臓を悪くして頭を悪くするだけだから
本人の責任の範囲である
わたしは酒は一滴も飲まないし
酒席が心地よいこともないので
さっさと帰って妻と寝ることにしている
妻だけがわたしを理解してくれるし慰めてくれる
アルコールで失敗するときアルコールが原因で失敗したと思っている人は多くて
実際そのような場合も多いのだけれど
実は躁状態が先にあってそのせいでアルコールを飲み過ぎて
それで結果として失敗になることがある
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まずアルコールで失敗しましたという場合
アルコールは一種の麻酔作用があって頭をしびれさせる
また日本酒などはアルコール以外の不純物を多く含むので複雑微妙な働きを脳に及ぼす
複雑なほうは分析しきれないから置くとして
純粋なアルコールが脳神経の働きを止めるのは分かる
脳はだいたいを言うと三層構造になっていると
科学読み物に書いてある
一番下には虫類の脳があって
呼吸、食欲、性欲、体温、などをコントロールしている。
その上にやや高等な脳があって、は虫類の脳を上から抑制的にコントロールしている。
つまりだいたいを言うと
食欲や性欲を抑制する信号を出していて、
出していいときには抑制を中止する。
そして人間になるとその上にさらに三層目が乗っていて、
下の二つの層に対して、やはり抑制的に支配している
つまり人間的になるほど
欲望に対して抑制的になるのである
そしていつ出していいのかを慎重に考慮する
いつでも出しているのは上位の脳が麻痺しているのだ
というわけで、アルコールを飲んだときには、脳の上の層から麻酔がかかっていく
人間をやめて猿になり、犬になり、猫になり、カエルくらいになる。
新橋の夜は動物園のようになる。
泉鏡花の小説「外科室」では、麻酔によって、抑制が解除されたときに
自分の奥底の心が出てしまうことを恐れた女性の話が出てくる
これが抑制解除である
アルコールが脳に作用して脳神経細胞を麻痺させていくときに
どの場所にも平均的に作用するわけではない
脳の血管の構造には個体差もかなりあって
どの部分から先に麻痺していくかは人によってかなり違う
麻痺した部分が抑制していた衝動が飛び出してくるので
人によってそれぞれ
食欲であったり性欲であったりする
他人に対して非常に攻撃的になったりもする
また人によってどの程度のアルコールでどの程度の深さまで脳神経が麻痺するのか
違いが現れる
それによっても、酔い方が違ってくる
おおむねそのようなことになるので
これだけでもなかなか複雑である
酔って攻撃的になる人の場合、
自分は根本的に過剰な攻撃性を持つ人間なのだろうかと疑問に思うとして、
過剰な攻撃性を持つ場合と、攻撃性を抑制する回路に脆弱性がある場合とを
区別するのは簡単ではない
しかしそれでも
仮想的にすべての上位中枢を麻痺させたときにどんな状態になるかを
考えてみることはできる
誰でも食欲もあり性欲もあるけれど
個体差はやはりあるだろうと考えられる
それは普段は、元々の衝動の強さと抑制の強さの合計になっている
抑制の強さは、上位の、高級な脳の、出来の具合による
それは遺伝もあるが教育やしつけとかなり関係する
元々の衝動の強さは、多分、ホルモンとか、神経伝達物質とか、
そのような物質的基盤によって決定される部分が大きいと思う
性ホルモン系とか甲状腺ホルモン系はかなり関係している
環境ホルモンはこの部分にダイレクトに効いている
たとえば強迫性性格というものを考えると
これは上位の中枢からの抑制がかなり強力なタイプである
強迫性性格は上位中枢の発達を示すから宗教的・神聖さ・崇高さとも関係し
さらに、そのくらい強く抑制してもなお普通の食欲や性欲があるというくらいだから
本来の食欲レベルや性欲レベルは高いはずである
強力な抑制がかかっていて、それでちょうどいいくらい、強い衝動があるはずである
これは強迫性性格の人を観察していた昔の人もときに語ることであり
一種独特な不潔さはこのあたりから来ているのだと思う
強迫性の人はたいていは清潔強迫や不潔恐怖などもあるもので
妙な具合に清潔なのだけれど
一方でなんだか独特に性ホルモンがしみ出しているような具合でもある
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嘘ばっかり言っていて
話が長くなったがここからが言いたいことで
失敗の原因が実はアルコールではなくて
その奥にある躁状態である場合である
その場合には
アルコールを飲みつつ
ギャンブルにはまり、相当損をしたあげく、最近やっと儲かるようになりましたなどと嘘をつく
ピンク系のサービスにはまり、あっという間に借金ができる
最近はネットがこうしたサービスの入り口にもなっていて
前金制になっているのにどんどん使ってしまう
本人は、酒のせいで覚えていないなどと言うのだが、
じつは躁状態そのものである
ギャンブル系やピンク系の商売の収支は躁状態の人がかなりの部分を支えているように思うのだが
実際はどうなのだろう
躁病を徹底的に治療してしまったら
かなりの数が倒産するのではないかと予想するが確証はない