八木重吉

めを つぶれば
あつい
なみだがでる

素朴(そぼく)な琴(こと)

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう

響(ひびき)

秋はあかるくなりきった
この明るさの奥に
しずかな響があるようにおもわれる

つまらないから
あかるい陽(ひ)のなかにたってなみだを
ながしていた

草をむしる

草をむしれば
あたりが かるくなってくる
わたしが
草をむしっているだけになってくる

病気

からだが悪いので
自分のまわりが
ぐるっと薄くなったようでたよりなく
桃子をそばへ呼んで話しをしていた

窓をあけて雨をみていると
なんにも要(い)らないから
こうしておだやかなきもちでいたいとおもう

http://www.aozora.gr.jp/cards/000013/files/542.html
貧しき信徒 八木重吉

昔から好きで
いまも好きだ

キリスト教
肺結核
茅ヶ崎の療養所
子ども

長い文章を書く体力はなかったらしい
私も長い文章を読む体力がないのでちょうどいい

夫・24歳、妻・17歳で結婚、29歳で没。
妻は八木の死後、吉野秀雄と結婚した。妻の回想の文章がある。
『琴はしずかに――八木重吉の妻として』