ドメスティックバイオレンスとは? DVとは

ドメスティックバイオレンスとは?
 ・夫や恋人など、「親密な」といわれる関係での暴力のことです。 ・「親密な」関係とは、夫や婚約者、恋人だけではなく、  内縁の夫、別居中の夫、元夫、元婚約者、元恋人なども含みます。 ・最近急に言われ始めたようですが、昔から世界中どこででも起きていたことで、  今まで家庭内のこと、ただの夫婦喧嘩、私的なこととされてきただけのことです。  最近ようやく「ドメスティックバイオレンス」と名前がつけられ、  社会問題として表に出始めました。 ・身体的な暴力だけではなく、脅す、罵るなどの精神的・心理的暴力、  望んでいない性行為を強要するなどの性的暴力、  生活費を渡さないなどの経済的暴力、  仕事や人との付き合いを制限するなどの社会的暴力なども含まれます。 ・人には、たとえいたらないところがあっても  (すべての人にそういうところがあると思いますが)、  今いる場所で、安全に安心して暮らす権利があります。  DVは、権力や力のある者によって、弱い者が一方的に  その権利を脅かされる、とても理不尽な人権侵害です。

DVの実態
 1998年の東京都の「女性に対する暴力」の調査  (男女4500人対象)結果 ・パートナーのいる1183人のうち33%が「身体的暴力を受けていた」と  回答しています。 ・「精神的暴力」「性的暴力」を加えると、63%の女性に被害経験があります。

暴力のサイクル
 暴力にはサイクルがあり、次の三つの相を繰り返すと言われています。 ①緊張期:緊張が高まってくる時期。   些細なことで夫は怒鳴り、妻はビクビクしながら夫をなだめる時期。 ②爆発期:暴力の時期。   些細なことから突如、抑制のきかない暴力に発展する。 ③解放期:愛情に満ちあふれているように見える時期。   夫は「もう二度としない」などと謝罪し、愛を語り、贈り物をしたりする。

社会的な背景
 ・今の社会は、男性中心の社会で、強いものが暴力によって弱いものを  支配する社会であり、その強者の暴力が容認されている社会。  その中で、暴力による支配を学んでいます。 ・「男らしさ」という思いこみの中で、暴力は、自分の権力を示すものと  取られがちです。 ・女性は世話をするもの、自分の意見を言わないものなどという社会的な  思い込みがあり、それを強制される社会です。

被害を受けた人の状態は?
 ・自責感、罪責感、無気力、無力感などを感じさせられます。 ・人間性をつぶされ、人が人らしくふるまうことを困難にさせられます。 ・被害者本人に問題があるかのような行動をとることもありますが、  それは暴力を受けたための葛藤がひどいためで、  被害を受けると誰でもそうなるのです。

子どもへの影響
 ・DVのある家庭では、高い割合で子どもたちへも  直接暴力がおよんでいます。 ・直接的な暴力はなくても、目撃者としてのトラウマを抱えてしまい、  子どもの発達上、さまざまな問題を抱えてしまうことになります。

加害者ってどんな人?
 ・社会的地位、学歴、収入などはさまざま。 ・内に見せる顔と外の顔が違い、外では人当たりのいい、  やさしい人と思われていることも多いのです。 ・パートナーに対して、「心理的・感情的なケア」を期待し、  自分の意に添わないことを彼女が言ったりしたりすると、  自尊心が傷つけられ、自分が受け入れられていないと感じます。 ・被害者の苦しみや人権を完全に無視し、  被害者を自分の所有物と見なし、コントロールしようとします。 ・どんなところからでも暴力をふるう理由をさがし出します。 ・自分の言動の責任を自分でとることができず、  自分がしていることを暴力だと認めません。 ・被害者に悪いところがあるからだと、被害者にすべての責任  (自分の暴力行為の責任までも!)を押しつけます。

援助者として大切なことは?
 ・援助者が、被害者のいたらないと感じるところを取り上げて  説教などをすることは、一層被害者を傷つけてしまうことになります。 ・被害者が「情けない」とか「恥ずかしい」とか言ったときには、  変に共感するより、「情けないのも恥ずかしいのもあなたではなく  加害者の方だ」とはっきり言う方が、真のサポートになります。 ・援助者は情報を提供しながらも、被害者がどうするかは  その人の意志に任せることが大事です。  何もしないということも、その人の選択肢のひとつであり、  援助者の正義感を被害者に押しつけて、  プレッシャーをかけてはいけません。

いろいろな誤解
○特別な、暴力的な人だけの問題でしょ?
 ・加害者は、たいてい、外に見せる顔はきちんとしています。  やさしそうだったり、紳士的だったりし、  きちんと職業に就いていて、社会的に認められています。  そんな「普通の人」「立派な人」という顔からは、  とてもDVの加害者だとの想像はつきません。  でも実は、加害者であるかどうかは、職業、社会的地位、収入、  学歴、年齢、人種、民族などとはなんの関係もないのです。
○暴力を受ける側にも何か問題があるんじゃないの?
 ・人は、たとえ何かいたらないところがあったとしても、  それを理由に暴力を受けていいとは言えないはずです。  たとえ腹の立つことがあったとしても、  暴力以外の方法で解決すべきで、加害者はそれができず、  責任を全部被害者に押しつけ、暴力をふるうのです。  DVは暴力を受ける側ではなく、暴力をふるう側の問題です。
○なぜ逃げないの?
 ・加害者はいつも暴力的なわけではありません。  「解放期」には、やさしくしたり、  もうしないと約束したりするため、  被害者は加害者が変わってくれるのではないかと  希望をつないでしまいます。 ・度重なる暴力のため、無力感にとらわれ、  逃げることができない状態にさせられています。 ・逃げたら殺すなどと、加害者に脅されているので  逃げられないこともあります。  また、たとえ逃げたとしても執拗に追いかけ、さがし、  脅し続けるので安全ではありません。 ・子どもがいるため離れられないと思い込んでいることも  あります。 ・「私がいなければ、この人はだめになる」など、  過剰に責任を感じ、加害者から離れることができないことも  あります。 ・社会的な支援体制がほとんどなく、  逃げても行くところがない、経済的な自立が難しいなどの  社会的に困難な状況があります。
被害者のために必要なこと
 ・24時間体制の一時避難場所 ・加害者の影に脅かされることなく暮らせる住居や、経済的自立 ・身体の回復のみならず、カウンセリングや自助グループでの  エンパワーメントを基本的な考え方にした安心できる場での心の回復 ・それらを保証するための法の整備

加害者の更正にとって必要なこと
 罪の意識がないため、更正しなければならないとは、 なかなか思わないので難しいのですが、 更正しようと思ったときは次のようなことが有効だと思われます。 ・被害者への暴力の責任を、加害者自らが  引き受けなければならないことを理解する。 ・カウンセリングや自助グループなどで、  なぜ加害行為をしてしまうようになったのかを、  必要ならば子ども時代にまでさかのぼって見つめ、  自分自身が受けた傷を受けとめる。 ・自分にいろいろな感情がわいたとき、  暴力以外の方法で解決する方法を学ぶ。 ・相手を主語に話すのではなく、  自分を主語に話すような訓練をする。

緊急課題
 ・DVに対する正しい知識と被害者の側に立つ考え方の啓発 ・24時間体制のシェルターの設置 ・いろいろな機関のネットワークの整備  (警察、裁判所、相談機関、シェルター、病院、   福祉施設、学校、行政など) ・逃げたあとの生活の保障 ・法的整備  ①暴力は、公的領域で起こっても私的領域で起こっても   犯罪であることを明確に規定する。  ②被害を受けた女性や子どもの安全を守る体制を整備する。  ③専門家(医者、カウンセラーなど)の通報義務。  ④被害当事者の安全確保のための、   迅速な手続きによる裁判所の保護命令。  ⑤社会的認識の徹底のための教育・啓発・広報活動。  ⑥女性に対する暴力の防止および被害者支援のための   活動をしている民間団体への財政支出を含む公的支援の充実。