天運苟如此且進杯中物

責子(こをせむ)

陶淵明(とうえんめい 東晋)

 白髪被両鬢(はくはつ りょうびんにこうむり)
 肌膚不復實(きふ またみたず)
 雖有五男児(ごだんじ ありといえども)
 總不好紙筆(すべて しひつをこのまず)
 阿舒已二八(あじょは すでににはち)
 懶惰固無匹(らんだ もとよりたぐいなし)
 阿宣行志学(あせんは ゆくゆくしがく)
 而不愛文術(しかも ぶんじゅつをあいせず)
 雍端年十三(ようとたんとは としじゅうさん)
 不識六與七(六と七とをしらず)
 通子垂九齢(つうしは きゅうれいになんなんとし)
 但覓棗與栗(ただなつめとくりとをもとむ)
 天運苟如此(てんうん いやしくも かくのごとくんば)
 且進杯中物(しばらく はいちゅうのものをすすめん)

◎子供五人の名前は舒・宣・雍・端・通。
☆二八は16歳。志学-15歳。論語「吾十有五にして学に志す」から。

白髪は左右の鬢をおおい、皮膚ももう老化した。男の子が五人いるが、すべて勉強ぎらい。阿舒は16歳で、無類の怠け者だ。阿宣は、やがて15歳だが、文章学問が好きでない。雍と端は13歳。まだ六と七の区別もつかない。通は、もうすぐ9歳。梨や栗をねだるばかり。ああ、これも運命ならば、あきらめて酒でも飲むことにしよう。