淡きを尊ぶ

かようにして

何事につけ淡きを尊び
万事事無しを旨として漫然と日月を空費する
解決は明日に延ばし
他人をあてにして
ひたすらに待つ
ただそのようにして冬を過ぎ春を迎えようとして
紅梅が開き雪が降りさらには地震に驚き目を覚ます具合である
驚くと言ってもその程度のこと
生きていても死んでいてもさして不都合はない程度の軽い存在
人生は私にとっては重いものだけど、あなたにとってあまりにも軽すぎる。
私はこの軽さ―この自由に―耐えられない。私はそんなに強くないの。
 Life is very heavy to me and it is so light to you.
 I can't bear this lightness, this freedom. I'm not strong enough. 
「存在の耐えられない軽さ」
この映画の原作となった同題の小説には、冒頭部分に「ニーチェの永劫回帰という考え方は
ニーチェ以外の哲学者を困惑させた」という言葉が入っている。
要するに、「軽い」トマシュが表現しているのは「超人」であり、
「自由」や「意志」に関してもこの立場から見るべきだというのが通常の理解でしょう。

軽さを生き切る強さを讃えている

しかし、万事は明日でいい
快楽も不快も明日でいい
深い話は明日でいい
今日はただうっすらと温かく過ごしたい

ただ淡き香りを頼りとして君を偲ぶ

存在を根源的に誘惑するものに
ラスト・グッドバイを告げて

根こそぎに奪い去る地引網的な野蛮さを拒否して
ただ静かに生きようと思う

軽くもない重くもない自由でも不自由でもない
全くの愚鈍な神経と何ら変わらず
ただうまいものがあれば少量つまみ
いい声をしていたら少しだけ聞く