宇多田ヒカル。1999年3月、1stアルバム『First Love』。
その年のゴールデンウィークに、友人のCDを繰り返して聴いていた覚えがある。
1000年前に和泉式部がいて、
現在、ウタダがいて、
未来では、現在はウタダの同時代と言われるようになるだろうと思ったものだ。
和泉式部のFirst Loveは有名なこれ。
黒髪のみだれもしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
わたしが
こんなことに?
このわたしを乱したあの人
この歌から生まれたのはこんな歌。
長からむ心も知らず黒髪のみだれて今朝は物をこそ思へ(待賢門院堀河)
うば玉の闇のうつつにかきやれどなれてかひなき床の黒髪(藤原定家)
夢かなほみだれそめぬる朝寝髪またかきやらん末もしらねば(永福門院右衛門督[風雅])
雲風のみだれもしらず空にのみたのめし月のゆくへかなしも(三条西実隆)
くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪おもひ乱れかつおもひ乱るる(与謝野晶子)
藤原定家による決定版アンサーソングは
かきやりしその黒髪のすぢごとにうち臥すほどは面影ぞたつ
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黒髪に残るタバコの香りして最後の手紙は明日の今頃
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乱れ は 淫ら につうじるのであって、
黒髪が乱れるとは 乱倫の様相である。
いまとなっては愛した人は数も知れないが
思い出すのはあの人のこと
初めてのことを教えてくれたあのひと
髪の乱れは心のもつれ
あいもつれ かつ乱れ 偲ぶる夜は 初恋の歌