人は人に何かの影響を与えることができる

人は人に何かの影響を与えることができる
それは信じていいことだ

その人は高校生の頃に妊娠してしまった
妊娠を知った男性は無責任に逃げてしまった

体についての不安と人間に対する不信で不安定になっていた
ぎりぎりの期限で処置は行われ
その前後でナースさんが付き添ってくれた

親は恥だというばかりで人間不信を増大させた
ナースさんはあまり語らなかったが
そばにいてくれた

すべてが終わって麻酔から覚めたあと
血圧が回復しなくて左腕には点滴が刺さっていた
ナースさんは右手を握っていてくれた
温かかった
その人は悲しくて泣いていたけれど
手の温かさがありがたくてそのことでも泣いた

そんなこともあってナースになる学校に進んだ
人間の命の現場はあまりにも冷酷で燃え尽きてしまいそうになる
それでも時々あの場面を思い出しながら仕事をしている