長時間テレビみる乳幼児に言葉の遅れ
2005年08月01日
昨年4月、日本小児科学会は、「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と題する緊急提言を発表した。
これは、同学会の「こどもの生活環境改善委員会」が実施した調査の結果、(1)長時間視聴は1歳6カ月時点の意味のある言葉(有意語)の出現の遅れと関係がある、(2)特に日常やテレビ視聴時に親子の会話が少ない家庭の長時間視聴児で、有意語出現が遅れる率が高い、(3)このようなテレビの影響にほとんどの親が気づいていない――などが明らかになったためだ。
同委員会は2003年に、乳幼児のテレビ視聴の発達への影響を検討するため、3地域(首都、中核市、農村地区)の1歳6カ月健診対象児について調査を行った。無記名方式による質問紙調査で、回答が得られた17カ月から19カ月児1900人について解析した(回収率は地域で異なる。平均75.2%)。
視聴時間別に運動、社会性、言語の発達状況を調べたところ、1日4時間以上の子ども(長時間視聴児)で、4時間未満の子どもに比べ、有意語出現が遅れる率が1.3倍高いことが分かった。
また、子どもの近くでテレビが8時間以上ついている家庭(長時間視聴家庭)で4時間以上視聴している子どもと、子どもの近くでテレビが8時間未満ついている家庭(短時間視聴家庭)で4時間未満視聴している子どもを比べたところ、有意語出現の遅れの率は、前者が後者の2倍と高かった(「インターネットの普及と“心の問題”」参照)。
調査では、子どもがテレビを視聴しているときに親がどのようにかかわっているかで運動や社会性、言語の発達状況に違いがあるのかも調べている。
その結果、テレビを見ながら親が一緒になって歌ったり、内容について語りあったりする家庭では、子どもの視聴時の反応(たとえばテレビの視聴時に「にこっと笑って親の顔を見る」「指さして質問する」など)が活発だったという。しかし、テレビの視聴時に親がかかわっていても、長時間視聴する子どもの場合は、有意語出現が遅れる率が高かった。
視聴時の親のかかわりが少なく、かつ長時間視聴する子どもの場合は、視聴時に親のかかわりがあり、かつ視聴時間が短い子どもの場合より、有意語出現が遅れる率が2.7倍と著しく高かった。この両群の比較では、言語理解や社会性、運動能力にも遅れが見られたという。
これらの結果を元に、同学会では以下のような提言をまとめた。