「懐かしの庭」ファン・ソギョン 岩波書店

青柳優子訳。
翻訳にも文章の癖が出てしまうことがあるものだが、
この本の翻訳については、そのような悪い意味での癖が
ほとんど見られず、上質のものに仕上がっている。

全体を読了して、また最初のあたりをちらちらと眺めていると、
部分が全体にどのようにつながっているか分かる部分があり、
興味深い。

ソビエトを築いた人々に触れて、
「彼らの努力と犠牲の果てに、近代は辛うじて七十年間反体制のバリケードを維持できたんだ。だが、ブルジョアはこれを再び奪い取った。全世界が植民地化される過程にあるんだ。」

グローバル化はつまり全世界の植民地化だという。

しかしそうであるなら、資本家たちはなぜそんなにも富を蓄えなければならないのだろう。そこが分からない。使い切れないほどの富を蓄積して、一体何をしようというのか。

ロシア貴族が、その倫理観ゆえに、自分の優位な立場を捨てて、民衆とともに生きようとする。
不幸な結果に終わる。それでも、いいことだったと言えるのだろうか。志はまことに輝かしいほどのものであった。しかし現実は悲惨だった。
夢想家であったことが罪なのだろうか?
さらに現実的に行動を計画しなければならなかった?
しかしその志の尊さは賞賛されるべきだと思う。

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