目取真俊「群蝶の木」

単行本に収められている他の作品とは少し違う。
テーマとして錯綜している、私には少し複雑。
他の作品は、何といえばいいか、
絵で言えば、バラのデッサンみたいな感じ、
この作品は、いろいろなデッサンを集めて、
テーマを伝えたいと意図している感じ。

古い同級生Tの死、故郷の祭り、沖縄出身のゴゼイおばあ、戦争、
戦争で帰らない親戚、本土決戦、沖縄の男、女、本土の兵隊、
朝鮮半島の女、
これらの要素が作り出すテーマは、重い。

沖縄の土地に折りたたまれて圧縮された何かが、
解凍されて私たち読者の前に供されるが、
時間構造も解体されていて、それらを総合するには
読む側の構成力が必要とされるのだと思う。
そのようにして小説の中で事態を構成する練習をしたら、
今度は自分の人生について、また自分の現在について、
事態を構成してみればよいのだろう。
そのためのよい練習問題だと思った。