老人脳に起こることを
たいてい起こることから
最後のほうは病気、
という順に並べると、次のようになる。
神経細胞の減少
リポフスチン沈着
アミロイド小体
トルペード(軸索ジストロフィー)
平野小体
顆粒空胞変性
老人斑
神経原線維性変化
嗜齦性グレイン
レビー小体
ピック小体
大変なことだ
第一、響きが怪しい
このそれぞれに発見の歴史があり
変化の本質についての議論がある
病気の原因だといわれたり結果だといわれたり関係ないといわれたり
普通の老化だといわれたり
そのたびに論文が出る
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アセチルコリン系の研究は進んでいて、
実際のアルツハイマー治療薬もアセチルコリン分解酵素の阻害剤である。
加齢に伴い、アセチルコリン系では、
海馬や線状体で、
ムスカリンM1受容体……変化なし
ムスカリンM2受容体……約半分に減少
ニコチン受容体……ムスカリン受容体よりもさらに明確に減少
という具合である。
最近の文献ではムスカリンではM5まで記載されていて、
たとえばジプレキサやエビリファイでがどれだけくっつきやすいかなどが言われている。
血管平滑筋、心筋、膀胱筋、などで関連があるのだが、
アリセプトを使用した時に、あまりひどい副作用は経験しない。
吐き気が起こるが、アセチルコリンの血中濃度に比例しているとは考えられず、
多分局所的なものだと思う。
脳の中ではアセチルコリン系は独立したものではなく、
セロトニン系やドーパミンと結合しあっているのだから、
脳よりも血管、心筋、膀胱などでもっと敏感な変化があっても当然だと思うのだが、
副作用は強くないと感じる。
血流によって運ばれるアセチルコリン濃度はほとんど変わらないからと思われるが、
それでは脳でどうして効くのか、
うまく説明ができない。
アリセプトの脳特異性はないはずだと思うが、どうだろうか。
アルツハイマー病では、
マイネルト基底核での細胞数が減少し、
大脳皮質や海馬でのChAT(コリンアセチルトランスフェラーゼ、つまり合成酵素)活性の低下がある。
結局アセチルコリンが減少している。
アセチルコリン受容体も減少しているのだが、
アリセプトを早めに使っていれば、
活発な活動によって受容体の減少が抑えられるのか、
それとも怠惰になって早く減少するのか、
よく分かっていない。
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このあたりの変化は性格変化とも連動しているはずで、
高齢になると
感情をコントロールしやすい、
気分が安定する、
情動が成熟する
といわれている。
安定して温厚な人柄になる。
人生に起こるひどい体験も、
年齢を重ねて、経験も見聞も広がれば、
人生最初の衝撃ではなくなるのだと考えられる。
脳血管性うつ病(Vascular depression)という言い方も提案されている。
脳血管障害の後、リハビリの経過の中でうつ状態を経験することはよくある。
喪失感が大きいという解釈と、
障害の部位によって、直接うつ状態に関係しているのではないかとの、
二つが従来からある。
特段の神経学的な異常が認められない老年期うつ病患者において、
脳MRIで異常所見があるのではないかといわれ、
脳血管性うつ病(Vascular depression)の仮説となるのだが、
報告が蓄積されつつあるところである。