東海道四谷怪談

リンク切れが心配なので
採録。

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東海道四谷怪談 
   1959・新東宝 

原作:鶴屋南北
監督:中川信夫
美術:黒沢治安
撮影:西本 正
音楽:渡辺宙明

出演:天知 茂
    若杉嘉津子
    北沢典子
    江見俊太郎
   池内淳子

 物語

夜道を行く二人の武士の前に現れた浪人風の男。男は地べたに手をついて懇願した。
「お岩殿との先の話し、今一度お考えくだされ」 男の名は民谷伊右衛門(天知茂)。
「貴殿のような身持ちの悪い者に、岩はやれぬとお断りした筈ではないか」 伊右衛門を冷たく突き放したのはお岩の父、四谷左門である。そして、なおも言い寄る伊右衛門に対し、左門は悪態をついて言葉の限り罵った。
堪忍袋が切れた伊右衛門は抜刀し左門と従人を斬った。
さらに、目撃者である提灯を持っていた下男をも斬ろうとした時、「おっと、待った、旦那、えらいことをしちまいましたね。あっしにいい考えがありやすぜ」 下男の名は直助(江見俊太郎)。

四谷家の仏壇の前にお岩(若杉嘉津子)とその妹お袖(北沢典子)。そして、伊右衛門と直助がいた。
「仇は顔の真中に傷があったことから、近頃、御金蔵破りを押し切った者に間違いありません」 直助が言った。お岩とお袖は直助の言葉を信じた。そして、伊右衛門と直助、お袖の婚約者、与茂七とともに父親の仇を討つべく出立した。

直助はお袖に惚れていた。与茂七が邪魔でならない。直助は伊右衛門に左門殺しを自分の胸に納める代わりに与茂七の殺害に手を貸すよう条件を出したのだった。
そして、旅の途中、直助は与茂七を滝壷に突き落とした。

江戸の長屋に住み着いた伊右衛門とお岩の間に乳飲み子が出来ていた。
お岩はもともと病弱な体だったが、最近ますます弱っている。
「仇はいつ討てるのでございましょう・・・」 お岩が傘張りをしている伊右衛門に気兼ねしながら言った。「・・・必ず討つと申しておるではないか」 お岩は敵討ちに真剣さを見出せない伊右衛門に対し、折に触れて愚痴をこぼす。

そんなある日、伊右衛門は町で侍たちに因縁をつけられていた娘を助けた。伊藤家の娘お梅(池内淳子)の家で歓待を受ける伊右衛門。お梅は伊右衛門に対し、助けられた恩以上のものを感じていた。

伊右衛門の夫婦仲は冷え切っていた。毎夜、博打に明け暮れる。家の中の金目のものをお岩から奪っていく。お岩は仇を討とうともせずに遊びほうける伊右衛門が恨めしかった。

直助の口利きでお梅との逢瀬を重ねる伊右衛門。そんな折り、直助が言った。
「旦那、そろそろ、お岩さんをばらしちゃどうです」 「何!」伊右衛門が形相を変えた。「二人を斬った旦那が、そう驚くこたぁねえ。少しぐらいあこぎなことをしなきゃ、この世間は渡っていけませんぜ」 直助は真からの悪党だ。
「・・・妙案があるのか」 「そうこなくっちゃ、あんまの宅悦にお岩さんの間男をさせるんですよ」 「拙者に岩は斬れん・・・」 「南蛮渡来の毒薬を飲ませるんです」

伊右衛門がお岩に着物を買ってきた。何時にない伊右衛門のみやげに喜ぶお岩。「これは良く効く薬だ。飲むが良い」 「今夜は、何から何まで・・・」伊右衛門の親切に嬉し涙にむせぶお岩であった。

伊右衛門のくれた薬を有り難く飲むお岩。その時、両国の花火がけたたましい大音響で響いた。 伊右衛門が町へ出かけた。

そして、伊右衛門に言い含められたあんまの宅悦がやって来た。宅悦は時々お岩の体を揉みに来ている内にお岩に惚れてしまっていた。伊右衛門の借金のかたに公認の浮気ができれば宅悦としては願ったりだ。
お岩を揉む宅悦はお岩の体に手を出した。激しく抵抗したお岩にしり込みする宅悦。「・・・これは、旦那さまが何もかもご承知のこと・・・」 「それは、誠か!」 お岩は驚愕した。
その時、突然、お岩が苦しみだした。「水、水・・・」 宅悦が急ぎ水を持ってきた。「あ、その顔!」 宅悦がお岩を見て叫ぶ。「え!」
鏡を見るお岩。鏡の中の自分の顔が化け物のように崩れ初めていた。梳かした櫛に髪の毛がごっそり抜け落ち血が流れ出した。 怯える宅悦。
子供の泣き声がする。「坊や・・・、一緒に死んでおくれ・・・」お岩は伊右衛門の企みを悟り、身の不幸を呪った。「極悪非道の伊右衛門・・・この恨み、はらさでおくものか・・・」

そこへ伊右衛門が帰ってきた。死んでいるお岩の顔を見て、さすがの伊右衛門もすくみあがった。慌てふためき逃げる宅悦を斬って捨てた。
やって来た直助とともに、お岩と宅悦を戸板の両側に打ちつけた。そして、戸板を川に流した。

伊右衛門とお梅の祝言の日。その初夜、蚊帳の中で待っていたのは、お梅ではなく顔の崩れたお岩だった。「伊右衛門どの~」 「おのれ!血迷ったか!」 伊右衛門が刀を振り下ろすと、倒れたのはお梅であった。
そして、駆けつけた父親をも殺してしまう。

川で釣りをしていた伊右衛門の前に戸板が流れ着く。戸板にはお岩と宅悦が表裏に打ち付けられていた。戸板が伊右衛門を襲う。刀を振り回す伊右衛門。

一方、お袖と住んでいた直助のもとへお岩の亡霊がやって来た。お岩を見た直助は震え上がりながら告白した。「お父上の本当の仇は伊右衛門だ」

与茂七は生きていた。滝壷に落ちた後、近くの住民に助けられたのだった。
お岩の亡霊は与茂七とお袖を伊右衛門と直助のいる寺へと導いた。
寺では伊右衛門がさんざん難癖をつける直助を斬り捨てたところだった。

「父の仇!覚悟!」お袖と与茂七が寺へ駆けつけた。そして、伊右衛門は二人に討たれる。「岩・・・許せ・・・」 民谷伊右衛門の最後の言葉であった。
 
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