たとえばの話、
右足を骨折して、
それをかばって左足に力が入って疲労して
筋肉が固くなってしまったという場合、
とりあえずは、左足の筋肉をゆるめればいいわけだけれど、
そうなるとその人はほとんど歩けないことになってしまう。
歩けないけれど、
痛みはなくなる。
それもとりあえずの治療だろうか。
統合失調症の場合に、
そんな問題が起こる。
ドーパミン過剰があって、幻聴とか妄想とかが起こると伝統的にいわれているのだけれど、
(幻覚と妄想をこのように同列に並べるのはなんだかセンスのないことのように私には思えるのだが)
それならばドーパミン遮断薬が効くだろうということで、
結果としては効くのだけれど、
陰性症状が前面に出て、意欲も起こらずという状態になる。
(陰性症状、陽性症状という分類もとても問題な分類のように私には思える)
右足が動かないのは陰性症状で、
それをかばうために左足が疲れてしまうのが陽性症状だとすると、
陽性症状を抑えていると
結局動けなくなってしまうはずだろう。
それでいいはずはない。
というわけで最近はこのあたりに大きな進歩があり、
右足の骨折は治し、左足の筋肉痛は、これも治すという、便利なうたい文句で、
なんだか都合がよすぎるのだった。
そもそもの右足の骨折を治すのが一番の仕事であるはず。
それがまだ謎なのである。
統合失調症の場合、謎のプロセスXがまずあって(これは多分遺伝子レベルの問題)、
それがプロセスYが起こることで症状として現実化し(これは多分環境因子、またはライフイベント因子)、統合失調症が成立する。
このとき、生体は反応としてドーパミン過剰状態となるので、ドーパミン遮断薬を使う。
するとドーパミンレセプターは増えてしまい、ますますドーパミンに対する過敏性が準備されることになる。
そこでますますドーパミン遮断薬が必要になる。ますます過敏性が準備され、以下、悪循環が続く。