見るべきものが、まだわたしには残されている。

吉川英治「新平家物語」は待ち時間に読んだり電車に乗って読んだりするにはちょうどよかった。

読み終わって、何だかとても寂しい。

芭蕉が奥の細道で強者どもを嘆いた。
それが源氏の武者であり奥州藤原氏の武者である。

そして時間は過ぎて、
すべては流れ去る。

真実さえも権力によって書き換えられ、跡形もない。

むなしさはますます募るのだが、
それでもいい、しばらくは生きるのだ。

見るべきものが、まだわたしには残されている。