「季節のない街」の方ができはいいと思う。
私が山本周五郎を敬遠してきたのは、
多分、こんな話があるのだろうなと予想していたからだ。
「さぶ」「赤ひげ」「樅ノ木」などはなるほど水準以上であるが、
「青べか」については、そうでもないように思える。
作者自身、多分、青べかの人たちに肯定的な感情ばかりではなかったようである。
そのあたりが読者に伝わったしまうのだろうと思う。
また一方で、高尚な文学が成立する基盤としての人間の生活の実相は
こんなところにあると指し示してくれているのかもしれない。
昔は「青べか」の暮らしをしていた庶民が、現代では、
どのような意識で、どのような暮らしをしているのか、
興味がある。
現代の環境に移植されたら、どのような振る舞いをするものなのか。