昔は母性本能と言ったと思うが
最近は養育本能といったほうがいいと思う
人間の本能にもいろいろあって
分かりやすいのは食欲とか性欲だけれど
養育本能も負けずに強力なものといわれている
本能回路があるならば嗜癖にもなるはず
そもそも個体の保存に役立つのが食欲とかで
種の保存に役立つのが性欲とか養育本能になる
女性の話を聞くと
出産したあと赤ん坊を抱いたとき素晴らしい幸福感に満たされ
これはあと何度でも体験したいと思うくらいだと言う人もいる
その後も子どもがいとしくて仕方のないときがあり
これが幸せなのだと満たされた気分になることがあるという
そんなのが養育本能だろう
ときにはこの子のためならわたしは犠牲になってもいいと思うくらいのものらしい
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本能といっても
脳の中のシステムであるから
食欲のシステムが上手く働かないこともあり
性欲システムが故障することもあるように
養育本能のシステムが故障することもある
その場合は本人が困るというのも一面だが子どもが困ることもある
養育する側が幸福に満たされている、その幸福感の反射として、
養育される側も幸福に満たされるのであって、
そこがうまくいかないと
発育プロセスに多少の支障が生じることがある
本能の定義も難しいけれど
脳に生得的に組み込まれた報酬系とでもいったものだ
理由もなく文句なしにうれしいのである
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報酬系と見れば
依存や嗜癖が生じるはずであって
母性行動にも依存や嗜癖と見ていい行動様式があるようである
全く無駄な性行動とか食行動は
依存や嗜癖と判定しやすいが
養育行動を依存や嗜癖と見るのは簡単ではない
利他行為のようにも見えるし様々な側面がある
しかしアダルト・チルドレン:ACの場合のように
相手のためにならず自分のためにならない母性行動が見られるときがある
報酬系の誤作動のひとつなのだろう
依存や嗜癖の典型的モデルはアンフェタミン嗜癖などであり
ラットは何回でもレバーを押し続ける
実際すさまじい
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大家族制のような状況であれば
親の養育本能に濃い薄いやズレや誤作動があっても
別の養育者が何とかする場合も多い
核家族化すると
養育行動は完全に個人的な領域に隠れてしまい
性行動と同じくらいプライベートなものとなり
他人は口出しできないものになってしまう
最近では祖父母といえども
孫の養育に関しては意見を言えない場合が多いようだ
それはよい状況ではないと感じる
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酒とかたばこは公認の嗜癖の側面があり
産業の裾野は広い
そういった嗜癖と行動としての養育本能の嗜癖の側面などを
同じに論じることは
理屈が固すぎるとは思うが
できないことではないと思う
嗜癖の裾野は広い