かんぽの宿問題、ひいては郵政の社長人事問題については
両論がっぷり四つで、なかなか面白い。
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お医者さんは最終的には顕微鏡を覗いて、
病理診断をして、病気についての判断をする。
そのときに、いろいろな倍率で見ると、
いろいろと違った意味づけをすることができるのに似ている。
また、病理の写真を提示するとして、
どの部分の写真を提示するかで、
何が証明されるかを操作することができる。
癌の部分とか炎症の部分とか壊死の部分とか再生の部分とか
いろいろに都合のいい部分を示すことができる。
グラフの書き方も実に嘘八百で
全く同じデータでも
急増したとの印象を植え付けることもできるし
例年と同じだという印象を生み出すこともできる
おおむねは目盛りの操作をして、
どの部分を切り取るかを考えて、
最後に比較対照を何に設定するかについて上手く選択すればよい
グラフの嘘がはっきり分かるのは
ファンドの目論見書に載っているグラフである
目盛りから期間から工夫して都合のいいところだけを切り取っている
はっきりいってズルしている
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マスコミは最近ではあからさまに嘘を流すことは少ないだろう
しかしどの部分を強調して
どの部分を無視するかについては
編集権の範囲内ということで
任意に操作することができる
郵政の社長人事で正義がどこにあるのか
また、郵政の社長を最終的に決定する仕組み、権限はどうなっているのか、
主張の意図によって、少しずつ違う部分の写真を提示しているように思う
本来は、最後は麻生総理がどう考えるかが大きいのだと思うが
最近の、厚労省分割の話もすぐに潰されたし、
「わたしは本当は郵政民営化に反対だった」発言も×とされたし、
その前には、定額給付金を受け取るのは「さもしい」と言ったりして、すぐに撤回、
そもそもの話、すぐに総選挙だという話もすぐに潰された。
麻生総理が何を決心しても、何を発言しても、意味のないことが分かった。
このあたりに関しても、麻生氏の意味のない軽い発言の実例と書く人もいるし、
本当はそれがよかったけれど、状況が変わったので、臨機応変に考えも変えたのだと書く人もいる。
これがフレーミングである。
今回も、
最終的には総務大臣の管轄だと述べていたのが、
鳩山総務大臣が所管大臣、株主が財務大臣、人事をやるのが官房長官、三者で話う合うのがいいんじゃないか
などと、根拠も意味も不明の言葉を発して、それをマスコミが繰り返して流している。
などと、根拠も意味も不明の言葉を発して、それをマスコミが繰り返して流している。
写真で言えば、どのように切り取り、フレームの真ん中に何を置くのかという問題である。
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専門的なことを一言すると、
事柄を全く歪めてねつ造するのは「精神病レベル」という。
妄想をそのように分類する。夫は浮気しているとか、そんな場合。
事柄の一部を事柄の全部であるかのように扱い、
事柄の全体を見ようとしない態度を「神経症レベル」という。
部分的な事柄として、間違いではないのだが、強調の仕方が偏っている場合である。
見たくないものを視野の外に押し出してしまう方法である。
人体は、不潔だといえば、確かに医学的にも不潔だし細菌もうようよしているのであるが、
しかし健康には問題がないし、みんなそうしているから、不潔とは言わないでおいている。
しかしそれを不潔と敢えて言い、ばい菌が一杯だと言えば、それは部分的真実ではあるのだけれど、
正しいとも言えない。事柄の全体を見ていない。
この観点で言えば、
マスコミは、例えば、誰かが死んだとか、どこかの戦争で日本が大勝利したとか、
そんな嘘を流しているのではない。精神病レベルではない。
しかし、何枚もある絵の中で、どれを流すか。
いくつもの言葉の断片の中で、どれを流すか。
その選択については、かなり神経症レベルの、偏りのある態度であると思われる。
話を変えて典型的に言うと、
夫婦げんかで、奥さんが殴られた、夫はDV男だ、ひどい、慰謝料を取って別れる、と言っているとする。
証拠の写真もあり、奥さんはたくさんの言葉で自分の両親や友人を信じ込ませている。
その一方で、夫の話を聞くと、妻が日頃から、人の話をよく聴かないで、一方的に断定し、
強烈な言葉で、しかも多弁で、夫を非難するので、どうにも耐えきれなくなって、
皿を投げてしまったのだと分かったとする。さらに妻は嫉妬妄想気味で、
夫が浮気をしていると妄想しているのではないかと疑われる面もあるとする。
話を総合していくと、妻の話が一面的で部分的である。夫の話のほうが総合的で全体的である。
しかし裁判などの場面では、総合的な背景はなかなか証拠として取り上げにくい。
まずは壊れた皿とか、傷ついた壁とか、その写真のほうが効果がある。
裁判官もサラリーマンなので、分かりやすい証拠に沿って判決を書く。昇進したいからだ。
ましてや今の時代に、DV男の味方をしたら、マスコミにどう書かれるか分からないので、
ひたすら女の味方をする。
結果として、慰謝料をたくさんもらって、女は離婚する。
ここでまた、部分と全体の話が出てくる。部分的には妻は勝利した。
離婚も達成したし、慰謝料も取った。しかし、本当に幸せになるのだろうか。
この場面では、弁護士の関与も大きい。弁護士は、妻の幸せの全体を考えるわけではない。
離婚訴訟を引き受けたのであるから、その訴訟に勝てばいいのが弁護士なのだ。
それだけのことで、何が幸せかは、依頼者が勝手に考えればいいことだ。
依頼者が依頼した案件について、実行すればそれでいいので、
何が依頼者の幸せかについては、弁護士はアドバイスする立場にないし、しない。
というような具合になって、まことに不幸せな状況が待っていることになる。
全体的な視点で見れば、
裁判官の部分的心理にとらわれる態度、
弁護士の部分的利益にとらわれる態度、
それらは、結局、男社会の男の利益を増大させる方向に働いているのかもしれない。
離婚が成立して、男は自由になってますます働き、幸せな再婚をするかもしれない。
離婚が成立して、女は次第に経済的に行き詰まり、不遇をかこつことになるかも知れない。
そのようにして男社会は保存されている可能性もある。
これも、ウェーバーの指摘するように、それそれの人が、職業的に厳格なピューリタン的な態度で、善を実行し、
全体としては、悪を達成していると言えるのかもしれない。
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郵政の社長人事問題については、
社長ポストを手放してしまえば、いままで隠蔽してきた問題が噴出して、
昔の韓国大統領のように、逮捕、自殺、そのようなことになりかねないと思っているから
必死になっているということらしい。
結構なまなましい政治である。
簡単に考えれば、鳩山総務大臣は、裏取引で巨大な利権を手にできるのだが、
今回は選挙と政界再編の絡みもあり、もちろんその前に個人的な遺恨もありで、
なかなかドライな和解交渉にならないのだろう。
いつものように反鳩山筋はスキャンダルの線も狙っているだろうが
なにしろいろいろと話題の多い人なので
多少のスキャンダルは目立たない程度のエピソードになってしまう
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郵政ファミリーが、全国に跨る郵政事業を独占的に運営し、その強大なネットワークが、国政を支配していた
郵貯の資金が財政投融資資金として第二の予算として使われていた
郵貯の資金が財政投融資資金として第二の予算として使われていた
おもに国債を引き受けていた
そのような状況はよくないと考えるのも妥当だと思う
また巨大宅配企業が郵政に乗りだそうとしたとき、
参入障壁を大きくして、事実上、封殺した。
そのあたりのことも、倍率を変化させてみれば、また違う意味が見えてくるのかもしれない。
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第三者諮問委員会の答申というものも
もう誰も信じないようなもので
結論が先にあって
それに適合する人選をするだけ、
ときどき人選を間違えるけれど、
それでも最終的にはその人にもいい思いをしてもらえば、
権力側の一員として、しかしポーズとしては、反権力の勇者として、振る舞ってもらうことができる。
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というわけで、
どの部分を強調するか、
どんな倍率で、どんな化粧をさせてみせるか、
それで全く逆のことも言えるのだと
今回の郵政、かんぽの宿問題では考えさせられる。