ルーランの使い方のヒント

ルーランはなんとなくプロフィールがつかめない薬で、
最初に使おうという気は起こらないものだった。
急性期にブレーキをかけるなら、リスパダール、セレネースやコントミン、レボトミンなど、
使い慣れた薬でいいし、
陰性症状に対処しつつ工夫すると言うならジプレキサで、
最近は何と言ってもロナセンとエビリファイがどのように使えるものなのか、
期待が高まっていた。
セロクエルとジプレキサは糖代謝との関係があり、かなり慎重にならざるを得ない。

そんな中で、ルーランを一日一回投与という方法は新しい提案である。
一日に数時間だけ、D2レセプターを完全にブロックする、そしてそのあとは、
代謝産物である15036の効果を期待するというのである。
これは頭がいいかもしれない。

ルーランは、ドーパミンD2とセロトニン5HT2Aに対する効果が主に言われているが、
そのほかに、5HT1Aとα2に対して効果が報告されている。

5HT1Aはこの会社得意の領域で、セディールがあるわけだが、
この成分が、不安、抑うつを改善するとともに、認知機能の改善に作用するのではないかと
言われている。
陰性症状の多くの面は認知機能の低下に関係しているので、
この面で期待されるわけだ。
しかし、そうであるなら、セディールもそのものを60ミリ入れてでどうかということになるが、
経験では、あまり効果がない。
統合失調症はもっと強力な病気なのだと思う。

α2に対する効果は、併用禁忌の項に明記されている。
エピネフリンと併用禁忌であり、エピネフリンはαとβ両方の刺激剤であるが、
ルーランはαだけをブロックするので、
結果として、βの刺激作用だけが残り、
エピネフリンとルーランを併用すると、血圧が下がるというのである。

βブロッカーは血圧降下、脈拍低下、不安軽減に役立つので、
何となく、βを刺激するとβブロッカーの逆で血圧が上がりそうであるが、
βは末梢血管に対しては拡張、心臓については、心拍数減少の方向で効くことになる。
ルーランはαブロッカーとしても作用するということだ。
エピネフリンとの併用禁忌は、ジプレキサなどにも書かれていて、
セロクエルやインプロメンなどでも同じであり、特に珍しいものではない。

全体の傾向としては、
ルーランはセレネースと同じくらいD2にくっついて、
リスパダールと同じくらいセロトニンにくっつく。
一方、セディールと同じように5HT1Aに対してアゴニトとして作用する。
代謝産物ID-15036は抗D2は弱く、抗5HT2Aは強力である。これが陰性症状には有効なはずだ。
体重増加は起こりにくく、高プロラクチン血症も起こりにくい。Neuroleptic Dysphoriaが少ない。
Neuroleptic Dysphoriaとは、抗精神病薬全般で起こりやすい、眠気、だるさ、注意散漫などであるが、それがないことで、患者さんは服薬を中断しにくいだろうと期待されている。