ホテルの部屋から見えるものは、
汐留で、羽田を離着陸する飛行機がよい。浜離宮もよい。
赤坂で国会議事堂が浮かび上がるのも、おもしろい。
横浜で、港が見えるのは、個人的に、つらい。
鎌倉で、海と江ノ島が見えるのは、悪くない。
西新宿では、特に見るものがないので、ずっと女を見ていた。
恵比寿では、部屋の窓際によれば、クリスマスの時期にはバカラの巨大シャンデリアが見える。
高輪では、ゆずと黒髪の香りがなまめかしく、いまも切なく、いまも恋しい。
国会議事堂は夜、クリスタルに浮かびあがる。
「あなたの腕の中にいるのが一番すき。
何かとてもたまらなくなってしまって。
あなたには携帯は使わないって決めてたんだけど。
言葉でなんていったらいいのかしら、
会いたかった……
つよく……
あ、でも、うごかないで。
こう?」
「最近は、伊勢物語を読み返していてね。
よく考えてみると、テーマと変奏という、音楽のような構造とも言えないことはないと
少し考えている。」
「清少納言にあったのは、
夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。
っていうやつ。
闇の中で、お互いの声と匂いと触感だけを頼りに、
味わいあうのは、いいね。
目を使わない。
電気を消して。窓の国会議事堂もカーテンを細くして。
ローションだけ少し使うね。」
2008-02-18