いつものように8丁目で1時間くらい飲んで過ごす
顔なじみになる前にやめていく子も多くて
最近はいろいろと大変な様子だ
なじみになって多い話は
男性とうまくいっていない話
それは男性の気をひく定番だ
その次は産婦人科的な相談
知り合いの子が仕事を探しているのという話も少なくない
オタク系と思われているのかパソコンは何を買えばいいのかとかそんな話も
車は何に乗っているかとか
最近旅行はどこに行ったとか
でも、連れて行けといわれたことはない
たまに夢の話も出る
どこかもう日本人のいない場所なの
アマゾンとかそんなところ
あなたがリーダーで私たちは宗教的な共同体で全部で5人くらいで行動している
固い絆と信じている
その夜は嵐で
恐いねって言ってると
あなたが、みんなボートに乗れと言う
危険すぎるというと
だから今夜しかないんだ
ここを出るんだと言う
そんな話は聞いていなかったのであわてるけれど
命令は絶対だ
ボートに乗り込む
川はものすごい急流で
雨もたくさん降っていて
風で雨が横殴りに打ちつけられる
みんなで乗り込んだとき
あなたも乗っていて
ずっと下流の豊かな地域に移動する
ここは食料が足りないと言う
でも船が転覆しないかとわたしが言うと
大丈夫だとあなたが言う
それぞれの人のポジションを決めて
あなたが綱をほどくために岸に上がる
そのときあなたはボートのオールを二本とも抜いてしまう
そして綱をほどいて足でボートを蹴って
私たちを沖に流してしまう
もう二度と会わない!
さっさと消えろ
などとあなたは言っている
わたしは声も出ない
ああこうしてわたしは死ぬんだと思う
こうしてあなたに裏切られて捨てられて
わたしは死ぬんだと思う
助かりたいなら今すぐ水に飛び込んで岸まで泳ぐしかないけれど
もう体に麻酔がかかったみたいに動けない
そして甘美な感覚がこみあげる
あなたに裏切られてわたしは死ぬんだ
多分あの女だ
アマゾンの女があなたを誘惑したのだと思いつく
無力に
子どもに頭をもがれるトンボみたいに
簡単に死ぬんだ
これがわたしの運命だったんだ
そしてあなたとの出会いからいままでを一瞬のうちに思い出す
わたしだってあなたを女から奪ったのだ
奪われても仕方がないんだと思う
ドキドキして目を覚ますと
夢だったと分かる
夢って、何か分かるんでしょう?
と言われる
何も、分からないよ
君が頭のいい嘘つきだってこと以外は