ドパミンレセプターとセロトニンレセプター

ドパミンレセプターではダウンレギュレーションやアップレギュレーションのストーリーで
一応整合的に事態を解釈できると思われる

だいたいを言うと、
ドパミンレセプターが4個で平均とすると
3個だと少ない人で5個だと多い人

5個で多い人はドパミンに対して過敏であり、
少しの刺激に対しても敏感に反応するので、どちらかと言えば、閉じこもりがちになって、自分を余計な刺激から守ることになる。

3個だと少ない人で
ドパミンに対してやや鈍感であり
多少の過剰刺激があっても問題ない

たとえば危険に対しても鈍感な感じで対処できる

人間はおおむね自分が生まれた環境に合わせてドパミンレセプターの数もセットされているので
たとえば刺激の多い都会ではドパミンレセプターは少ない方がいいだろうし
刺激の少ない田舎ではドパミンレセプターは多い方がいいのかもしれない
傾向としてはそんな感じででもやはり平均が一番生きやすいことに変わりはなく
たいていの人は4個という設定になる

さて、5個の設定の人が
余り友達も多くなく
少しの他人の態度にも過敏に反応して疲れるなあと思って暮らしているとする
そんな人が思春期になって
異性と出会う必要があり
また仕事を決めて社会人となることになると
刺激が過剰になりドパミンがたくさん出て
5個のレセプターだと刺激が多すぎると言うことになる

ここでドパミンレセプターに蓋をする薬が昔からあって
それを使うと、5個のレセプターを持つ人も4個程度の敏感さで生きることができて、
それはまことに都合がよろしい

というわけで
本来5個あるレセプターのうち4個は働いていて1個は薬でふさがれている
という状態になる
しかしその人の本来の行動パターンはすぐに変化するわけでもなく
相変わらず読書が好きとかそんな暮らしをしている

すると脳の方では
異性と接するときとか会社で働くときは4個でいいのだけれど
家にいるときなどは5個の方がいいなということになって
だんだんドパミンレセプターが5個働いていて1個は蓋をされている
という状態になる
つまりレセプターが一つ増えてしまう
これがアップレギュレーションだ

こうなってしまうと
薬を使っていたのも元の木阿弥と言うことで
5個のレセプターになっている
まずいなあというところに
何かの偶然で薬を飲み忘れたりしていると
蓋をしている一つのレセプターも生き返ってしまい
合計で6個のドパミンレセプターになり
結局もっと過敏になってしまう

ここでとりあえずの対応をするとすれば薬を増量することになる
するとドパミンレセプターは4個、蓋をされたドパミンレセプターは2個と言うことで
一応快適になる

しかしこの先はまた同じ話の繰り返しである

薬を増やす→アップレギュレーション→ドパミンレセプターが増える→薬を増やす

という悪循環を断ち切らなければならない。

そこでダウンレギュレーションを利用することになる。

たとえば上の例での、5個のドパミンレセプターを持っている人は

普段の生活はドパミンの少ない生活をしていて
静かな日常である。
このひとが思春期になって社会や異性と出会うときにドパミンがたくさん出て
過剰に反応することになる
薬を使ってドパミンレセプターの1個に蓋をして4個が生きているとする
この人にちょっとだけ刺激を増やしてもらって
普段の生活で常時ドパミンを少し多めに維持してもらうと
ダウンレギュレーションが生じて
4個だったレセプターが3個になる
その方向に動くと薬をやめても全レセプターは4個で
特別な過敏性はなくて生活ができる。
これが治療になる。

しかし難しいのは薬を減らし加減にして生活刺激を増やすとまた破綻する可能性がある
破綻しないようにしてレセプターを減らさなければならないのだから難しい
とりあえず破綻を回避するには薬を増やして生活刺激を減少させればいいのだけれど
それは薬をたくさん飲んで閉じこもって暮らしているということで
そのあいだにアップレギュレーションが起こってますます過敏になってしまう

その加減を定式化することはできていないし、
そもそも矛盾した要求なのかもしれない
しかし、薬を少し減らして、レセプターを露出させ、
生活刺激を少し増やして、ダウンレギュレーションを起こす、
これが原則であることは確かだと思う。

*****
ドパミン系については上のように薬剤と生活刺激を調整することで
レセプター・レギュレーションをする議論ができるが、
セロトニンの場合はどうかといえば、簡単ではないと思われる。

素朴に言えば、うつ状態ではセロトニンが少ない、
SSRIを使えばセロトニントランスポーターをブロックするのでシナプス間隙でのセロトニンが増える、
したがってうつ状態が改善されるということになる

しかし多分セロトニンレセプターやセロトニントランスポーターの変化が重要で、
SSRIの効果については2週間から8週間程度の時間をかけて評価することが必要なのは
そのあたりの事情があるからだ

セロトニンレセプターやセロトニントランスポーターの変化の話は
一種の体質改善と思っていいだろう

そもそもの始まりの状態で
セロトニンレセプターが
3個、4個、5個となっている個体があるとする。

いろいろなうつ病で状況は異なると考えられるが
ここでは双極性障害に近いタイプを例にとって考えると
この人は循環気質で対人距離も近く賑やかで対他配慮もある人だ
セロトニンレセプターは3個くらいで
普段はセロトニン量は多い方だろうと考えられる

それが何かの環境で熱中が続く事態があったとすると
セロトニンを使い切る
枯渇してしまって使えなくなるのでセロトニンが一時的に少なくなる
そしてうつ状態が始まる

そのときセロトニン・レセプターが4個か5個かあれば、少ないセロトニンを拾うこともできるけれど、
もともとセロトニン・レセプターが少ないとそれができなくて、
うつ状態になってしまう。

ここでSSRIを使うと一時的にセロトニンを多くすることができる。うつ状態は改善する。

しかしここから先が問題である。
セロトニンを増やしている限りは、ダウンレギュレーションが起こり、セロトニン・レセプターは減少する。< br />すると、セロトニンに鈍感になるので、ますますセロトニンを増やさないといけない。
ここで悪循環が生じる。

これを断ち切るには、すこしセロトニンを少なめに維持して、
セロトニン・レセプターのアップレギュレーションを誘導することである。
少なすぎるとうつ状態になるのでよくない。
やや少なめに維持する。

しかしながら
セロトニン・レセプターが5個の人を考えると
容易に躁状態になりそうで
そのように単純ではないだろうと推定できる。