あの日わたしは
EGO-WRAPPIN'の
くちばしにチェリーを聴いていた
細かな雨の降る午後だった
記憶の中で
あの時間だけがこうして
スポットライトをあてたように蘇るのはどうしてだろう
いまの私はあのあと何が起こり
何が起こらなかったのかを知っている
そのようにしてしばしのあいだ
思いに耽ることができる
起こったこと
起こらなかったこと
起きて欲しかったこと
起きて欲しくなかったこと
過去は一つしかない
そんな当たり前のことに
いまさらため息が出る
深刻な喪失の傷
まだしばらくかかりそうである