非定型うつ病という名前を見て、素朴な理性で考えると、
定型でないうつ病のことかなと思うだろう
歴史の最初は当然そういうことだった
その頃は定型うつ病といえばテレンバッハの定義したメランコリー型うつ病のことで
病前性格、発病状況、症状、経過、治療、などがセットとして提示されていた。
そしてその典型から外れるものをくずかごに押し込めて、
うつ病に似るが、非定型なものとしてまとめていた。
しかし当然、そのくずかごの中から、ある種のグループが見いだされ、
まとめて呼ばれるようになる。
何か別の名前をつければよかったのだけれど、
いろいろな事情があって、非定型(atypical)という呼び名が残ってしまった。
しかしそれはかなり有望なグループだったので、いまではDSMにも診断基準がのっている。
つまり、うつ状態を呈するものを分類して、気分障害、双極型、単極型、ディスチミア、非定型うつ病などと
していて、その以外のもの、つまり、くずかごの中から、さらに、新型のうつ病として
分類しようとしている。
非定型という言葉で何を意味するかが、
時代によって、文脈によって異なるわけで、実はとてもよくないことで、
もっと積極的な名前をつけるべきなのだけれど、
同じことは精神病の分野でも起こっていて、
非定型精神病と呼ばれるものがある。
広義には、典型的三大精神病である、統合失調症、躁うつ病、てんかん、そのどれにも分類できないもの、
と当然なるのだけれど、
狭義には、満田が提出した、統合失調症と躁うつ病とてんかんのそれぞれの要素を同時に持つもので、つまり、
統合失調症の陽性症状、
躁うつ病の経過特性、
てんかんの脳波異常などの身体異常、
を併せ持つものである。
これも、満田精神病としてもよかったのだと思うけれど、
曖昧に非定型精神病という名前が残り、
半ばくずかごであり、半ば満田精神病であり、という具合である。