2008年に行なわれた米大統領選挙。オバマ候補が当選したときの夜の街の人々の熱狂ぶりを覚えている人なら、オバマ候補に投票した人たちのテストステロン[男性ホルモンの一種]のレベルは勝利で急上昇していたと思うことだろう。だがそうではなかったようだ。
実際には、民主党支持者のテストステロン・レベルは安定していたのに対して、共和党支持の男性たちのテストステロン・レベルは急激に下がっていた。また後者は、強制的に服従させられたような惨めな気持ちだったと述べている。
この結果は、投票終了後とオバマ大統領の勝利が正式に発表された時に、男女合わせて183人から採取された唾液のサンプルに基づいている。
男性の投票者は、候補者の政治的勝利に対して、ひいきのチームがライバルをやっつけたときに感じるのと同じ、自分が勝ったかのような高揚感を感じる。これは、10月21日号の『Public Library of Science ONE』に掲載されたこの研究の主要な学術的発見だが、当然なこととも言える。
はるかに興味深いのは両者の違いだ。オバマ大統領に投票した人のテストステロンはとにかく安定していた。この調査を担当した研究者たちによると、通常夜間のテストステロンのレベルは低下するので、安定しているということは「理論的には上昇していることと同じだ」という。
一方、夜間のテストステロンが通常低下する分を考えても、共和党支持男性のテストステロンの減少は非常に大きかった。
実際に、共和党支持の男性たちは、オバマ大統領に投票した人々に比べて、「結果を知ったとき、大きな力で支配され服従させられたような惨めで悲しい気分になった」と研究者たちは書いている。
「さらに、大統領選挙後の支配階層の交代は4年間継続するのだから、政党が政策決定の支配力を失うことのストレスが、男性のテストステロンを継続的に抑制する結果になることもありうる」としている。
ちなみに女性の場合は、どちらの政党支持者も、選挙の夜のテストステロンには大きな変化はなかった。
参考論文: “Dominance, Politics, and Physiology: Voters’ Testosterone Changes on the Night of the 2008 United States Presidential Election.” By Steven J. Stanton, Jacinta C. Beehner, Ekjyot K. Saini, Cynthia M. Kuhn, Kevin S. LaBar. PLoS ONE, October 21, 2009.
[株取引とテストステロンの関係についての研究を紹介する日本語版記事はこちら。筋力トレーニングや興奮(例えば闘争や危険な行為など)によってテストステロンの分泌が促されることが報告されている]