幸せな日のわたしをあなたは思い出させて

これから苦しい場面があるんだねえ

そうだろう多分
涙が出そう 泣いてもいい?
いいさ 多分 僕らの人生は涙なんだよ
でもね あの日 私たちが幸せだったのは 覚えていたい
そうだね 覚えていたい 忘れたくない
わたしが あとで あの日の幸せを忘れてしまったとして わたしに 思い出させてね
君が忘れるはずはないだろう 僕だって忘れるはずはない ただ二人が離れてしまうのが つらくて 苦しくて
思い出したとしても 離ればなれで思い出す?
そうだねえ そういうこともあるだろう そんなことも含めて 神様の決めることさ
あの日の二人を思い出すとして そのときは多分 幸せな時ね 不幸せなときは 幸せな時間を思い出せない だから不幸なのよ
そうだね 幸福のかけらでも 思い出せるうちは まだ大丈夫だ
だから思い出せるようにずっとそばにいて
ああもちろんそうするよ そうするけれど 
わたしはあの幸せな時間と一緒に 今日の話を思い出すと思う そうすれば 幸せが 缶詰をあけるみたいに もう一度味わえる
もちろんそうしよう 僕らの涙にも理由があるし 不幸には意味があるんだ
いまこのままで人生が停まってしまったら そのほうがいいかしら
そうかもしれない そうでないかもしれない 分からない
品川心中 っていいじゃない
この世も名残、世も名残 死に行く身をたとうれば あだしが原の道の霜 ひと足ごとに消えてゆく 夢の夢こそ哀れなれ

夢の夢 それほどまでに 夢を見たかった

梓弓(あずさゆみ) ま弓(まゆみ)槻弓(つきゆみ) 年をへて わがせしがごと うるはしみせよ

梓弓 引けど引かねど 昔より 心は君に よりにしものを

心は君に よりにしものを

あらたまの 年の三年を 待ちわびて ただ今宵こそ 新枕(にひまくら)すれ

目をつむれば 世界は消える 時間を消してしまう方法だってある でも この不幸にくるまれている感覚も 僕は嫌いじゃないんだ
あひ思はで 離(か)れぬる人を とどめかね わが身は今ぞ 消えはてぬめる
そこにいたづらになりにけり
いたづらになりにけり