抗うつ剤はうつ病を治す薬なんだから
眠気も吹っ飛んで
やる気がもりもり出て
注意集中も急激によくなるかといえば
そんなことは全くない
薬剤の注意書きにあるように
眠くなる
便秘になる
可能性がある
眠くなるのでは元気が出るのとは逆の方向
便秘になるのもお腹の運動が鈍くなる印
それでもうつ病が治るということはどういうことなんだろう
それが不思議でしょう?
ここはいろいろな考え方があって
ひとつは「足りないものを補っている」という考え
それがセロトニン説
これはセロトニンを食べ物で補給するとかそんな考えにもつながる
しかし考えてみると
セロトニンを増やしてあげたのに
効果が出るまで2週間とか1ヶ月というのは腑に落ちないではないか
まるで骨折がくっつくとか
傷口がかさぶたができて治るとか
そのくらいの時間経過である
ということは足りないものを補っているのではなくて
治癒のプロセスを援助しているのだろうと推定される
ギブスのようなもの
かさぶたのようなもの
かさぶたのイメージは分かりやすい
傷口がふさがるために一時的には痛いし痒いし皮膚が突っ張るしでいろいろ大変だけれど
結局はかさぶたがしっかりできて
それがはがれるのが一番いい
最近では傷をやたらに消毒しないで
なるべく自然なかさぶたを作る考え方があり
参考になる
抗うつ剤は比喩的にいえば、神経の領域で、
多分かさぶたができて、それがはがれるまでのも神経保護剤になっているのだと思う
てんかんの薬はだいたいが神経保護作用があって
どれも気分安定剤として使われている
てんかんとうつ病がどう関係しているのか
メカニズムからいうと分からない話だ
てんかんは神経の異常興奮が周囲に伝わってしまう病気だ
典型的には一カ所から始まって徐々に波及する
それを抑える薬が抗てんかん薬だ
うつ病は何かの神経が異常に興奮するという観察はあまりない
だからてんかんの薬がうつ病に効くというのも不思議ではある
けれど
神経を保護するという観点から考えれば分からない話でもない
ーー
わたしの考えでは、
元気を出す細胞群が頑張りすぎでダウンしてしまうため、
強迫性傾向とかうつ病の傾向が出るのだと思う
だから治療としては
元気を出す細胞群の回復を手助けするのがよい
薬で神経を保護して、がんばり過ぎの習慣から身を遠ざけること
クイックにこの三日だけ元気をくださいとか
そんな話ではない
ーー
糖尿病でインスリンが足りないならインスリンを補う
甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモンが足りないなら甲状腺ホルモンを補う
それは分かるのだけれど
足りないものを補うタイプでない薬もたくさんある
治療を阻止する原因を抑えるタイプと分類してもいいかもしれない
眼精疲労の時には思い切って目を休めること
マラソンのあとは筋肉を休めること
ピッチャーは投球のあとで、壊れた毛細血管が再生するまで投球を控えること
そんなものに似ている
骨折したときに
直接骨にプレートを当てて釘を打ったりする
また一方でギブスを当てて骨がくっつくのを待ったりもする
抗うつ剤は釘ではなくてギブスだろう
風邪の時の解熱剤は
風邪の時に熱が出るのは、その熱で風邪の原因を攻撃しているのだから、熱を下げるのは
不合理だとする考えも強いのだが
熱の程度も問題である
体の側の過剰な反応を抑えることで
痛みが少なくなり
水分摂取や食事もすすみ
結果として速く治るという見方も根強くある
過剰な熱による後遺症や続発する細菌感染症を防ぐこともできる
体の自然な反応を適切な程度にコントロールすることで解決を速くするのである
原因に直接効くのではないけれども
役に立つ
うつ病のときは、夜眠れないというだけで、相当消耗する
睡眠リズムの補正だけでずいぶんと治療に役立つ
逆に、そういう点から、うつ病とはどのような病気かという推論ができる
たとえば鉄欠乏性貧血のように
鉄が足りないから鉄を補えばいいという話ではないらしいことは分かる
でも、鉄の補充の時にも、鉄が補充されて、鉄を運ぶタンパク質と結合し、体中に運ばれ、
というプロセスを考えると、鉄を飲んだら明日から大丈夫というものでもない
原因に対して直接補正をかけるときでさえ時間がかかる
貧血でめまいがするというときに
胃薬を使うのは一見、因果関係が分からない
胃はめまいを感じる器官ではない
しかし消化管から出血しているとの補助線を引けばすっきり理解できる
そんな風な補助線を何本か引いてやっと抗うつ剤が理解できるのだと思う
少なくとも効くまでに2週間から1ヶ月かかる薬なのだから
原因に対して根本的に効いているかどうかは疑問がある
抗うつ剤でむしろ眠くなるという矛盾点が
かえってうつ病という病気の理解の補助になるはずだ
といっても、そこから先が難しいのだけれど