性器ヘルペスは休眠状態にならない

性器ヘルペスは休眠状態にならない
2009/12/01(火) 
性器ヘルペス(疱疹)は性器病変を起こす性感染症(STD)であるが、真の休眠状態にはならず、突発的な発症時でなくともウイルスが生殖管にわずかに排出されていることが、新しい研究によって示唆された。持続的に排出されるごく少量のウイルスでも他人に感染するかどうかは特に述べられていないが、この知見によって同疾患のライフサイクルに対する科学者らの見方が変わる可能性があるという。
ヘルペスウイルスは、休眠期には脊髄周辺のニューロン(神経細胞)に潜み、時折ニューロンを伝わって生殖管へ達し、皮膚細胞に感染し病変を引き起こす。米国では約4,500万人、つまり12歳以上の5人に1人が性器ヘルペスウイルスに感染しているが、病変がまったくないか、病変に気づかないために多くの人が感染に気づいていない。患者には通常、発症時の性交を避け、症状がなくとも感染予防のためコンドームの使用が勧められる。
米ワシントン大学(シアトル)のJoshua Schiffer博士らによる今回の研究は、性器病変だけでなく単純疱疹や吹き出物を引き起こす単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)について検討したもの。同氏は、今回の知見が口唇ヘルペスの原因となる1型(HSV-1)にも当てはまると考えている。
研究では過去の2件の研究データを使用。最初の研究は発症時に毎日、病変が消失するまで性器のスワブを採取、2つ目の研究は1日4回、60日間、無症状であっても採取したものであった。データを数学的モデルにあてはめ排出率を調べた結果、85%の排出エピソードは無症候性か、病変を起こさなかった。持続時間は、約60%が12時間未満であった。
Schiffer氏は「休眠期のウイルスはほとんど不活性であるというのが定説であるが、われわれのモデルは、ウイルスが持続的にニューロンから放出されていることを示唆している」と述べ、すべてではないが発症の多くはアシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビル(※日本での適応症は帯状疱疹のみ)など入手可能な抗ウイルス薬によって制御できるという。
米シンシナティ小児病院メディカルセンター(オハイオ州)感染症部門のNancy Sawtell氏は「この研究は研究の新しい道を開くものであるが、ウイルスDNAが低レベルであっても他人に感染すると示唆するのは時期尚早である。ウイルスDNAの存在は感染を意味するが、感染粒子を必ずしもそこに保持しているとは限らない。また、今回の研究ではニューロンそのものが検討されておらず、ウイルスDNAが体内の他の部位から由来した可能性もある」と述べている。
研究結果は、医学誌「Science Translational Medicine (サイエンス・トランスレーショナル [研究室での基礎研究成果を実際の臨床の場に応用する過程]医療)」11月18日号に掲載された。