認知症研究と臨床の最近の動向

認知症については学問の領域でますますたくさんのことが分かってきている

認知症の予防に役立つと認定されているのは三つ
1.人とたくさん話して交流すること
2.一日30分、散歩すること
3.魚を食べること
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レビー小体病(Dementia with Lewy bodies)では
初期に幻覚(特に幻視)、
症状の変動が激しい、の二点が特徴で
アリセプトがよく効く
このことと、パーキンソン病とレビー小体病の終末症状がよく似ていることと
どのように説明できるのだろうと
ずっと思っていた
幻視があるのでドパミン遮断薬を使いたくなるが、
そうするとパーキンソン症状の群を促進してしまうので
アリセプトの方がいい

最近の脳病理学では
昔風の分類を一回解体して、
1.「脳のどの部分に」、例えば前頭前野、脳幹部
2.「どんな物質が蓄積する」、たとえばタウタンパク質、TDP43

まだ推定の段階であるが
αシンクレオパチーとしてパーキンソン病、レビー小体病
タウオパチーとしてアルツハイマー病、前頭側頭型認知症(その中にピック病)、(βアミロイドはこの領域)
TDP43としてALS
これらの物質が脳幹部に蓄積するか皮質部に蓄積するかで症状に違いが出る
脳幹部に蓄積すると運動障害の方が強く出るし
皮質部に蓄積すると認知症の方が強く出る
しかし、連続したものである

これらの病気を上のように再定義しようという提案は、
大変素晴らしいと思う。たぶん、正解なのではないかと思うし、期待する。

アポリポプロテインE(apoE)遺伝子のε4アレルを調べておけば危険因子の事前確認になる

ロシアでアレルギー・花粉症などの治療に使われていた医薬品が有効らしいことも注目されている

Dimebonという。

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ネガティブなデータとしては
1年前までフィーバーしていたアルツハイマー・ワクチンが
全部無効と認定されたこと
なかなかショック

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MCIについて研究が進んでいる
記憶のロスはあるのだが日常生活に支障はない状態
物忘れがあり書類をなくす、怒りっぽくなるなど
ウェクスラーのロジカル・メモリー2

また脳の高次機能障害については研究方法も含めて研究中のようだ
これは特に興味深い分野である

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診断学では各種の能力の「数値化」が進んでいる
抑うつ、ADL、問題行動など、Trait marking test

βアミロイドをPetで染めて描出して診断するのが有力な方法

PIB Petはアルツハイマー病を90%の正確さで診断する
ピッツバーグ・コンパウンドを使う

また診断に心筋シンチが役立つことが分かっている
これは自律神経機能を測定するもので
αシンクレオパチーで診断率が高い

最新の方法としてはアミロイドの状況と心筋シンチの状況でマトリックスをつくり
診断する
これにアポリポ蛋白Eの4型をチェックしておく
アポEε4キャリアーならば頻回に検査を受ける

さらにグリコシドオキシターゼなどの研究が進んでいる

パーキンソン病におけるGBA遺伝子変異も注目で
ゴーシェ病の遺伝子変異の研究が糸口になっている

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ここまで事象が明らかになり
ALSとかパーキンソン病とかもいわれるのだから
おなじ脳内の病変であるはずの
統合失調症や躁うつ病について
同じレベルでもっと分かってもいいはずだと思うのだけれど
実際はそうでもない

光学顕微鏡と電子顕微鏡の違いのようなもので
病理のレベルと研究道具のレベルが一致していないのだと思う

ウィルス病の病原体を探して
見えるはずのない光学顕微鏡をのぞき続けていた野口英世を思い出す

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またiPS細胞の応用が研究されている

いままではパーキンソン病の人の神経細胞を直接採集して検査することはできなかったが
皮膚からiPS細胞、そのあとで神経細胞を造り、直接研究できる

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プリオン病に似た面がアルツハイマー病にないかとも話題になっている

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人口構造の老齢化の進行が進むと
健常者3人で認知症1人を看護する現実である

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老齢者の診察でメモリー障害を疑う場合あからさまにメモリーチェックをしてもうまくいかない場合も多い
最初は全日の献立でも思い出してもらうのが方法だといわれている
5品思い出せたら問題なし

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高血圧、高血糖、高コレステロールなどの問題がある人も多いので
これら領域の専門家との協力が必要である