シリコンバレーをはるかに超える、世界一のイノベーション都市を、日本に作る方法

シリコンバレーをはるかに超える、世界一のイノベーション都市を、日本に作る方法 

http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080319/1205929244 より

概要

東京から直通電車で20~30分くらいのところに、経済特区を作る。

仮にJシリコンバレー特区と呼ぶことにする。

この特区では、英語が公用語。

役所、医療施設、学校、レストラン、スーパー、電車、交通標識など、あらゆるものが英語で運用される。

この特区内の企業に年収500万円以上で採用された外国人には、この特区内だけで働けるワーキングビザが発行される。

当面は、インド、中国、西欧、北米、旧共産圏などの高度知識労働者をこの都市に集めることを目指す。

この特区内では、所得税が一律10%のフラットタックス。

目標として、50年かけて世界中から1000万人の高度知識労働者をこの都市に集めることを狙う。

彼らに、世界的ベンチャー企業をどんどん生みだしてもらう。

アメリカのシリコンバレーは「アメリカ」ではない

そもそも、アメリカの中でも、シリコンバレーというのはかなり特殊な土地だ。

アメリカ人全てがシリコンバレー精神を持ち合わせているわけではない。

シリコンバレー以外のアメリカは、もっと保守的で、日本ほどでないにしろ既得権益層が牛耳っている、風通しの悪い階級社会だ。

シリコンバレーの風通しのよさと、どんな人にも分け隔て無く平等にチャンスが与えられる公平さと、新しい物をどんどん生み出そうという自由と活力に満ちた空気は、アメリカ人気質というより、シリコンバレー気質なのだ。

それに、アメリカのシリコンバレーを形作っているのは、アメリカ人だけではない。

中国人、インド人、ヨーロッパ人など、さまざまな国の人材がシリコンバレーを形作っている。

シリコンバレーはアメリカというより、もっと異質の、イノベーションを生み出すことに特化した特殊な国際都市という側面があるのだ。

だから、既得権益で固められた旧態依然とした社会構造を持つ日本であっても、シリコンバレーと同じようなイノベーション文化を持つ都市を造れてもおかしくはないのではないか。

それどころか、シリコンバレーというのは初期の原始的なプロトタイプ製品のようなもので、アイデアのタネにすぎない。税制も含めてしっかり整備しそこに+α、+β、していけば、まだまだそれよりもはるかに強力でポテンシャルの大きな都市を建設できるのではないか。

目的

目的は、税収確保である。

最終的には、質の高い少人数制教育、安心できる医療、そして、全ての国民の生活を保障するベーシックインカムをまかなえるだけの税収を生み出すことを目標とする。

以下、その可能性を探るため、具体的な施策について考察する。

ベンチャーのボトルネックを解消する一律10%のフラットタックス

たとえば、創業期のベンチャーは、ハイレベルのエンジニアを雇いたいが、それを雇うだけの資本がないことが多い。

これは、ベンチャーが抱える大きな問題の一つだが、この経済特区ではその問題を解決するため、所得税を一律10%にする。

累進性の一切無い、フラットタックスだ。

ベンチャーは、サービス実績がまったくない状態では、外部から資本を調達するにも、倍率がつかない。

倍率がろくにつかない状態で外部から資本を調達してしまうと、会社が自分たちのものではなくなってしまう。

そもそも、実績どころか、プロトタイプすらない状態では、倍率がつかないどころか、多額の金を出資してくれる人間はなかなかいない。

これは、投資家の立場からしてみれば当然だろう。たいていの投資家は、まだどうなるかさっぱり分からない状態のプロジェクトに、大金を出資する気にはまずならない。ある程度、成功のめどがつき、投資が回収できそうな状態にまで至ってから、はじめて投資する気になるというものだ。

だから、最初に出来る限り自己資本と最小限の外部資金だけでサービスを立ち上げ、ある程度の実績を作って会社の価値を高めてから、その潜在価値に応じた倍率をかけて、外部から資金を必要額調達するようにするのがよくあるパターンだ。

このため、立ち上げ期のベンチャーは、資本が少ない。

したがって、エンジニアに高い報酬を払うだけの資金的な余裕がない。

だから最初のうちは、できるかぎり給料を抑えたいのだ。

もちろんストックオプションは発行するが、ストックオプションを発行する代わりに少ない給与で我慢してくれ、と言っても限度がある。

そもそも、それまでアメリカのシリコンバレーで年収2000万円で働いており、その収入を前提とした生活水準で暮らしていたハイレベルのエンジニアに、「ストックオプションをあげるから、年収1500万円で働いてくれ」と言っても、とくに家族持ちの場合など、生活のグレードダウンを受け入れなければならず、家族の了承を得られないことも多い。

そこでフラットタックスにより、ベンチャーは年収の高いハイレベルなエンジニアを割安に雇うことができる。

ハイレベルエンジニアにしてみれば、年収がかなり減っても、フラットタックスで税金が安いので、手取りは同じだから、生活水準を落とさずに、ベンチャーに参加できるのだ。

これで、創業期のベンチャーは、人材獲得がやりやすくなる。

世界中から高度知識労働者を惹きつける税制

そもそもこの経済特区のコンセプトは、世界中から高度知識労働者を集めて産業集積を作り出すことだから、フラットタックスとはとても相性がいい。

高度知識労働者には高額所得者が多いから、フラットタックスとは、実質的に高度知識労働者の税金に狙いを絞って減額する制度となるのだ。

ちなみに、フラットタックスは、1994年に東欧のリトアニアなどで導入されて以来、東欧を中心に急速に広がり始め、現在、世界の15以上の国・地域で採用されている税方式。ロシアも香港も採用している。

もちろん、フラットタックスには非難の声もある。

たとえば、ドイツやフランスの政府は、「フラットタックスは税のダンピングだ」と非難している。

なぜ、ドイツやフランスが非難するかというと、外国がフラットタックスを導入すると、彼らが被害を被るからだ。

どんな被害かというと、人材流出や企業流出という被害だ。

要するに、フラットタックスとは、税をダンピングすることにより、他の国の高度人材や企業(=雇用)を奪う税制だと言いたいのだろう。

したがって、日本がこの税制を採用した経済特区を作ると、諸外国の高度人材を奪い、反発を買うリスクがある。

しかし、もしこの税方式で国の財政の採算が取れるなら、それはダンピングではなく、市場原理に基づく適正価格というものではないだろうか。

そもそも、税金もグローバル競争の時代に入っている。

ある国に居住して税金を払うということは、その国の社会システムを利用し、その利用料をその国へ払っているようなものだとも考えられる。

つまり、世界規模で社会システム利用サービスの価格競争が起き、市場原理が働き始めているのだ。

支払う税金と、その国の社会システムの利用価値を秤にかけ、いちばん割の良い国家を選択するグローバルな企業やグローバル労働者がどんどん増えているということだろう。

要するに、時代の流れだということだ。もしかしたら、むしろ日本よりも先に、中国やインドやベトナムやタイなどの国で、経済特区を作るなどしてフラットタックスの導入が始まるかも知れない。

先行者メリットや集積効果を考えると、先にやったもん勝ちのゲームである可能性も高いのだ。

フラットタックスにすると、あまり税収が得られないのではないか?

ここで、「フラットタックスなどを導入したら、高額所得者からの税収が少なくなるじゃないか」という疑問もあるかもしれない。

しかし、たとえフラットタックスだったとしても、年収3000万円の労働者は、年収300万円の労働者の10倍の税金を払ってくれる。累進課税でなくても、高額所得者が高額納税者であることには変わりはない。

そして、年収3000万円の労働者が年収300万円の労働者の10倍公衆トイレを使うわけでも、10倍警察の手間がかかるわけでも、10倍道路を利用するわけでも、10倍公園のベンチを占拠するわけでもない。

たとえフラットタックスだったとしても、高額所得者に居住してもらえれば、国家としては、はるかに儲かるのだ。

だから、フラットタックスにしても、それによって、多数の高額所得者を世界中から集められるなら、十分以上にペイするのだ。

また、もう一つの点は、低所得者であるか高所得者であるかに関係なく、常に一定の割合でモラルのない人間がいるものだが、フラットタックスにすると、モラルのない高額所得者が手間暇かけて、節税努力や脱税努力するのが割に合わなくなるため、納税率が上がるという効果があるという点。複雑な仕掛けを使った節税や、ばれないように巧妙に脱税するにも大きなコストがかかるため、累進税率がなくなると、節税努力によって得られるものが少なくなり、そんな不毛な努力をしているくらいなら、本業のビジネスにせいを出した方が得になるということだろう。

見方を変えれば、本業に精を出すより、複雑で巧妙な仕組みをつくってまで節税や脱税をした方が儲かる、というのは、累進税制下で高額所得を得るという特殊な状況でのみ発生する状態だ。それ以外の場合は、そんな不毛な努力をするより普通に働いた方がよっぽど収入が増える。

フラットタックスを採用する国が急速に増えているのは、この効果によるところも大きいと見る向きもあるようだ。

そもそも、フラットタックスにすると言っても、この経済特区の中だけである。日本の他の地域の税体系は今のままだ。

もちろん、日本の他の地域に住む人間に、この経済特区を利用して租税回避などをやられたら、税収増どころか、税収減になりかねないので、租税回避をやらせないためのさまざまな仕掛けを施しておく。

たとえば、このフラットタックスを適用できるのは、この経済特区に居住し、かつ、この経済特区の職場で働いている人間のみに限定したり、適用対象も、限定された産業分野で、新しい産業を創出するようなビジネスに限定するなどする。

はてな界隈では金持ちというと子飼弾氏のイメージに引きずられているところがあるが、現実には、彼は金持ちの典型でも何でもない。日本の高額所得者の大部分は、IT産業従事者などではないし、ブログを書くような人種でもない。日本の金持ちの多くは開業医と旧産業の経営者だ。たとえば、繁盛している旅館やレストランや優良中小企業の経営者をイメージした方が近いだろう。

そして、そういう旧産業の経営者たちは、自分の会社を営む土地に縛られており、彼らに、この経済特区を利用して租税回避をさせないような規制の仕掛けを作り出すのはさほど困難ではないだろう。たとえば、ビジネスの実態がこの特区にあるわけではないのに、社長の本社宅だけここに移転して、偽装IT子会社を作るなどして租税回避しようとした場合など、徹底的に厳しく取り締まり、通常よりも厳しい重加算税を課すなどする。

Jシリコンバレー特区の高所得者は、日本経済の超優良顧客となる

そもそも、日本の低付加価値産業は、地場産業にしろ、農業にしろ、中国からの大量の低付加価値商品や低付加価値農産物に押されて、壊滅状態になっている。

日本に残っているのは、高付加価値製品を作っている地場産業、高付加価値の農産物を育てている農家、高付加価値の家電製品を作っているメーカーなどだ。

最近では日本の農家は、日本の高級な農産物を、アジア各国の富裕層に向けて輸出し始めているようだ。

また、日本の高級かわらメーカーなどの高品質製品を作っている地場産業は、ロシアへの輸出をはじめたりしている。

結局のところ、日本の産業のうち、グローバル競争にさらされて生き残れたのは、高付加価値産業のみだったということだ。

だから、日本の産業を育てるには、外需にしろ内需にしろ、日本の高付加価値産業の生み出す商品を消費してくれる顧客をいかにして開拓するか、というゲームになる。

低付加価値商品ばかりを消費する低賃金労働者が増えても、彼らが利用するのは、メイドインチャイナの、100円ショップで売られているような安物雑貨や中国製の格安家電でしかなく、中国やベトナムなどの発展途上国からの輸入が増えるだけで、結局のところ、日本経済の活性化にはあまりつながらない。

これが、ベーシックインカムを実現するのに、わざわざJシリコンバレー特区のような仕組みを作らなければならない理由だ。

もし、単純に日本の高額所得者に重税をかけて財源を作り出し、それをベーシックインカムとして低所得者層に分配するというような、ネズミ小僧方式を採ると、低所得者層の収入が増え、高所得者層の収入が減る。「そうすれば、低所得者の消費が増え、日本経済が活性化する」という話があるが、話はそう簡単にはいかないと思われる。

なぜなら、低所得者層が主に購入するのは、中国製の安い家電や、100円ショップで売っている中国製の安い雑貨であって、日本製の1本1万円の高級タオルや、一パック700円の高級イチゴなど、たいして消費してくれないからだ。したがって、この方式でベーシックインカムを実現した場合、単に中国やベトナムからの低付加価値商品の輸入が増えるだけだろう。

しかも、高所得者に重税をかけたため、日本製の高付加価値商品を買ってくれる顧客の収入を激減させるので、100g数千円もする松阪牛や、一個300円する高級デコポンや50インチの大型プラズマテレビは日本ではどんどん売れなくなる。このため、日本の高付加価値産業はかなり深刻な打撃を被むり、むしろ日本経済はかなり冷え込むのではないか。

そうすると、そもそも税収が減ってしまい、ベーシックインカムを維持し続けるための財源確保が危うくなる。

つまり、ネズミ小僧方式のベーシックインカム構想は、持続可能性が怪しいのである。

だから、日本の高額所得者に重税をかけて、高額所得者を減らすのは、日本経済にとって得策ではなく、むしろ逆に、日本の高額所得者の数を可能な限り増やすような政策を行うことによって、日本の農家や地場産業や製造業を潤わせる戦略の方が、はるかに、日本人全体の懐を豊かにし、税収を増やし、持続可能なベーシックインカムを実現できるのではないだろうか。

そして、そのための施策が、このJシリコンバレー構想なのだ。

このJシリコンバレー特区ではたらく高度知識労働者は、ほとんどが高額所得者だから、まさに、メイドインジャパンの高付加価値商品の最高の顧客である。

極論を言えば、Jシリコンバレーの高度知識労働者が、まったく税金を払わなかったとしても、彼らが稼いだお金は、日本の高付加価値農産物や高付加価値の高級タオルや、高級家電を購入するという形で、日本経済に流れ込み、結果として日本人の懐を潤し、日本政府の税収アップになるのである。

フラットタックスのせいで、吸い上げる税金が少々少なかったとしても、ぜんぜんペイするのだ。

世界トップレベルの大学、教授、学生を集積する

この経済特区にふさわしい人材育成をするためのJシリコンバレー大学を設立する。

この大学には、世界中の優秀な教授や大学講師を、ヘッドハントしてきて集める。

ヘッドハントに当たっても、フラットタックスが威力を発揮する。

優秀な大学教授や大学講師には、高額所得者が多いからだ。

同じ年収なら、欧米の大学で働くより、日本のJシリコンバレー特区の大学で働く方が、はるかに手取りが多くなる。

そして、英語圏の一流大学の分校を、この特区に誘致する。

ハーバード、MIT、スタンフォード、ケンブリッジなど。

日本の有力大学にも、分校を作ってもらう。

東大、京大、早稲田、慶応など。

もちろん、授業は英語のみ。

また、多額の奨学金を使って、世界中の国々の才能ある学生をこの大学に集める。

専門の学生獲得組織を設置して、世界中の高校や大学を訪問し、優秀な学生にJシリコンバレーに来てもらうように交渉する。

とくにアジアの貧しい国々では、勉学の意思と才能がありながら、お金がないために進学できない学生がたくさんいる。

そういう人間に、どんどん奨学金を貸し付ける。

当然、大学では通常の講義や研究室の他に、ベンチャー論をはじめとして、起業家になるために必要な知識やノウハウも教える。

そして、在学中、もしくは、卒業後に起業することを奨励する。

創業期のベンチャーに参加することも奨励する。

また、大学外の起業家やエンジニアなども自由に参加できるセミナーなども、頻繁に開催し、産学の交流が進むようにする。

当然、通常の日本人のエンジニアや起業家も自由に参加できる。もちろん、言語は英語のみだが。

起業家やエンジニアの交流スペース

この特区には、たくさんのカフェを誘致し、世界中のトップエンジニア、起業家、科学者、学生のオープンな交流スペースをたくさん作る。

それらのカフェで気軽に意見交換し、ブレストし、アイデアが生まれ、意気投合したら、その勢いで起業してしまうというのもありだ。

カフェは、国際色豊かな、多様なものを用意する。フランス風カフェ。中国風カフェ。昔の日本のお茶屋のようなカフェ。インド風カフェ。ベトナム風カフェ。アメリカ風カフェ。バリ風カフェ。などなど。

徹底的な無国籍感を、この特区のアイデンティティにする。世界のどの場所なのかよく分からない、世界の縮図のような不思議な空間を演出する。

また、世界的なカンファレンスやイベントを行うための設備も十分に用意する。

英語

このプロジェクトのキモは、日本人が、日本語と日本文化を完全に捨ててかかることである。

日本人が日本語や日本文化に固執する限り、シリコンバレーのような世界的なサービスを開発できる都市を建設するのは無理だ。

たしかに、まず、英語を母国語とする人口は日本語よりも遙かに多く、英語を母国語とする国も多い。

さらに、セカンドランゲージとして話す言語人口も含めれば、英語人口ははるかに巨大になる。

しかも、中国語、アラビア語、スペイン語などの言語に比べると、英語を読み書きできる人口の平均的知的水準は極めて高い。

とくに、セカンドランゲージとして英語を話す人々は高等教育を受けている人間が多く、知的水準がたかい。

したがって、英語圏マーケットこそが、世界でもっとも良質のマーケットなのだ。

だから、この経済特区が生み出すサービスは、はじめから英語圏をターゲットに開発される。

英語圏のユーザのために開発し、英語圏のユーザに使われながら、育てていく。

そうすることで初めて、世界的なサービスを最短距離で開発できるのだ。

ベンチャー運営に最適な労働法規

創業期のベンチャーは、資本が少なく、ビジネスモデルが不安定だ。

予想外に競合製品が先にマーケットに出て、戦略を変更せざるを得ず、人材の入れ替えをしなければならなくなることもよくある。

そういうとき気軽に労働者を解雇できないと、ベンチャーの経営はすぐに行き詰まってしまう。

また、ほんの数年の間一生分働き、一生分の報酬を手にして、早期引退する、という働き方もベンチャー特有の物だ。

休日も平日も関係なく、残業とかそんな細かいことは考えず、創業メンバー全員で、がんがん前に突進するのがベンチャーだ。

一生分の労働を数年に圧縮するのだから、かなりむちゃくちゃで非常識な働き方になる。

このため、通常の会社のような細かな勤怠管理や残業代の申請というのは、ベンチャーと相性が悪い。

そもそも、創業期のベンチャーで働く人材は、会社に雇われた労働者というより、一緒にビジネスを作り上げていく共同経営者の側面が強い。

通常の産業における労働法規を四角四面に適用したのでは、まずうまくいかないのだ。

このため、会社が気軽に人を雇い、気軽に人を解雇できるような法制度にする。

当然、法律上は、残業代を出さなくてよいし、休日手当を出す必要もないようにしておく。

もちろん、これでは労働者保護に問題が出る。

しかし、そもそも通常の労働者の権利が欲しい人間は、この経済特区で働くべきではないのである。

ここは、イノベーションシティであり、通常の労働者の街ではないのだ。

ワーキングビザや居住権の取得しやすさ

この経済特区に限っては、アメリカよりも、はるかに入国しやすく、ワーキングビザを得られやすくしておく。

アメリカの場合、テロに狙われやすいので、入国管理にはかなり慎重にならざるを得ない。

9.11以降、世界中の人材がアメリカに入りにくくなってしまっているのだ。

しかし、日本はアメリカほどにはテロには狙われてないので、入国審査をそこまで厳重にする必要がない。

これは、アメリカのシリコンバレーに対する差別化要因の一つになる。

もちろん、日本の入国管理は厳しい。

だが、この経済特区に限って言えば、必ずしも入国審査を厳しくする必要はない。

だから、どんどん人材を獲得するため、この経済特区に限っては、年収や学歴などから、高度頭脳労働者であることさえ確認できれば、どんどん入国を認めるようにする。

世界最高水準の食生活を享受できる国際都市

アメリカのシリコンバレーの弱点の一つが、その食生活の貧しさではないかと思う。

たしかに、シリコンバレーは多様な人種はいるし、多様な食文化が混在しているものの、基本はあくまでアメリカ式の食生活だ。

そして、世界の他の国々に比べ、シリコンバレーも、そのお隣のサンフランシスコも、普段の食生活のレベルがそれほど高いとは言えない。

そして、味の面でも、健康面でも、バリエーションでも、日本、とくに東京の食生活のレベルは、世界的に見て極めて高い。

とくに、普段の普通の食生活のレベルが高いのだ。

最近は、健康指向の高まりもあって、日本の食文化は世界中にどんどん広まっている。

だから、東京の食生活をベースに、世界中の多様な人種のニーズに答えられるような食環境をこの特区に作れば、シリコンバレーよりもはるかに質が高く、満足度の高い食生活を提供できるのではないかと思う。

もちろん、とくにインドなどは宗教的な理由により、牛や豚が食べられない人もよくいるので、それに合わせてベジタリアンフードを提供する外食産業等も計画的に誘致するようにする。

また、ミシュランも認めた、世界最高レベルの美食都市東京の外食産業の支店を、どんどん経済特区に誘致する。

もともと東京の外食産業は、世界中の多様な食べ物を提供できるが、それをさらにこの経済特区の人種構成に合わせてカスタマイズする。

なにより、電車で20~30分もすれば、いまやパリと肩を並べるほどの世界に誇る美食都市東京へ出られる。

当然、スーパーで並ぶ食料も、レストランで供給される食事も、すべて安心して食べられる、日本水準の物が提供される。

中国やインドなどに同じような特区を作っても、なかなか同じようにはいかない。

そして、中国やインドなどの新興国だけでなく、欧米の豊かな先進国の高度人材が快適に暮らせるには、インドや中国の食生活のレベルではまだまだ厳しいのだ。

このため、日本品質の高品質な食生活インフラは、他の新興国が作るシリコンバレー的な経済特区に対する差別化要因となる。

高度知識労働者の子供たちに適した教育サービスの提供

現在、西葛西にインド人のITエンジニアコミュニティがあり、1000人ぐらいのインド人が住んでいるそうだが、彼らは日本の教育に非常に不満を持っているようだ。

彼らのようなITエンジニアは知的水準が高く、その子供たちにもハイレベルの教育をしたいと考えているので、日本の学校教育では、レベルが低すぎるのだ。

ましてや、世界中の高度人材のあつまるJシリコンバレー特区では、さらに拍車をかけて、ハイレベルの英才教育が求められる。

このニーズに応えるため、幼稚園から大学まで、基本的に、高度知識労働者のニーズに応えた、質の高い教育サービスを提供する。

もちろん、全ての教育は英語で行われる。

英語圏のレベルの高い教師をたくさんヘッドハントしてくる。

1人の教師につき10名程度の少人数制にする。

これにより、家族持ちの高度知識労働者も、安心して移住できる。

言論の自由

中国にシリコンバレー型経済特区を作っても、まずうまくいかないと思われる。

なぜなら、言論の自由がないからだ。

本当に独創的なアイデアは、言論の自由が保証されてこそ、生まれてくる。

このため、潜在的なライバルのリストからは、中国は外されると思われる。

また、ロシアなども言論の自由が十分に保証されているとは言い難い。

このため、言論の自由が十分に保証されているという点も、やはり差別化要因になると思われる。

豊かな先進国の知識労働者が満足できる都市インフラ

インドや中国に作られるシリコンバレー的経済特区の問題は、先進国の労働者を満足させるだけの質の高い生活インフラを提供しにくいということだ。

職人や労働者の質も低く、階段でも道路でも電車でも、作りも運用もまだまだ雑なのだ。

このため、欧米の豊かな先進国の高度知識労働者でも十分以上に満足できる日本の道路、水道、電車などを提供できるのは、この経済特区の差別化要因となる。

当然、この特区の道路、電車、水道などのインフラの品質は、日本人の生活水準に合わせて、日本の建築会社が建設する。

世界一、時間に正確で、安全で、清潔で、明るく、快適で、利用しやすい日本の高度な電車網が高密度に張り巡らされた都市にする。

この都市は、基本的にどこでも電車と歩きで移動できる。

現在、景気対策のための無駄な公共事業が大幅に削減されたため、日本の建築業はかなり疲弊している。

このため、この特区のために、大量の建築需要が発生すると、たくさんの建築業者に職を提供し、失業者&ワーキング対策にもなるだろう。

安全

この特区は、アメリカに比べると、はるかに治安がよい。

アメリカと違って銃は厳重に規制されているし、犯罪の巣窟のような危険なエリアも絶対に発生させないようにする。

また、充実した警察力と、監視カメラネットワークにより、犯罪を犯しにくくなっている。

隣接した東京も、世界一治安のよい国際都市である。

なにより、アメリカのようにテロの不安におびえながら生活しなければならないということもない。

この高い安全性も、アメリカのシリコンバレーに対する差別化要因となる。

娯楽&文化施設

英語のコンテンツのみを扱う映画館や、英語を話す人向けのスポーツバーやクラブハウスなど、この特区特有の娯楽施設や文化施設を充実させる。

大量の洋書が充実した本屋やCD、DVDショップも備える。

また、いつでも20分で、世界でもっとも安全で快適で充実した世界都市の一つである東京へ出られる。

週末などは、東京で過ごすことも出来る。

質の高い生活支援サービス

この特区に居住する労働者は、世界一質の高い日本の生活支援サービスを提供される。

どこにでもある清潔で便利なコンビニ。快適に使える宅急便。

家電が壊れたら、メーカーに連絡すれば、すぐに修理してくれたり、充実したサポートが受けられる。

風呂、トイレ、上下水道のトラブルも、世界一すばらしい対応をしてくれる。

この、日本人ならだれもが当たり前に、快適に享受している世界一質の高い生活支援サービスは、日本以外ではなかなか得難いモノだ。

特に、中国やインドなどの新興国が経済特区を作っても、日本と同じレベルの生活支援サービスを提供しようとしても、まず無理だろう。平均的な労働者の質が段違いだからだ。

平均的な労働者の質の高さという点において、日本は圧倒的な世界一なのだ。

これも、強力な差別化要因になるだろう。

気候

気候に関しては、アメリカのシリコンバレーにはかなわない。あちらの方が、はるかに気候がよい。

ただし、インドや中国の経済特区よりは、日本の方が気候がよいだろう。

地震

当然、この地震リスクが最大の問題だ。

しかし、これを言い出したら、結局なにもできはしない。

建築物の耐震性を十分に確保しておく、避難経路や避難場所を計画的に都市計画に入れておくなどの対策を盛り込んでおくようにはしておく。

まとめ

このJシリコンバレー構想のキモは、以下のようなものだ。

●日本に英語を公用語とした国際都市を作る

●高度知識労働者にとって世界で一番割の良い税制

●日本の高付加価値製品の優良顧客

●世界一質の高い日本の生活インフラ

●魅力的な世界都市東京が電車で20分

この中でも、「英語」と「税制」と「東京」が極めて強烈な鍵となっている。

とくに、日本人が日本の言語と文化を完全に捨ててかかる、という潔さが、このプロジェクトの命だ。

このJシリコンバレーこそ、われわれの子供たちに残してあげられる、最高の贈り物にならないだろうか。