最近のSSRIなどの抗うつ剤については
セロトニン・トランスポーター・ブロッカーの側面から説明されることがある。
一度放出されたセロトニンを元の細胞に再取り込みするとき、
セロトニン・トランスポーターの部分が働くのであるが、
薬剤はそこの働きをブロックしてしまうので、
再取り込みされず、シナプス間隙に残ることになる。
すると結果としてはシナプス間隙でのセロトニン濃度が上昇し、
うつが改善されるというのがメインストーリーというかセントラルドグマである。
それはいいとして、
それが長期間続くとどうなるかを考える。
まずシナプス後細胞のセロトニン・レセプターでは、
常時セロトニン濃度が高いので、セロトニン・レセプターの数は少なくてもいいのじゃないかと相談がまとまる。
そしてダウンレギュレーションが起こる。
セロトニン・レセプターが少なくなると
セロトニンに対しての感度が悪くなるのであるから、
薬剤でセロトニンがたくさんあるうちはいいけれど、
薬剤が足りなくなったり、
環境要因でセロトニンが少なくなったりすると、
てきめんにセロトニンの不足の症状が出てしまう。
つまり、セロトニン不足に対して前よりももっと弱くなりうつ状態になりやすくなる。
一方、セロトニン・トランスポーターについて考えると、
薬剤によりブロックされた状態が続くと、相談の結果、セロトニン・トランスポーターを増やそうということになる。
ブロックされた分はそのままにしておいて、
新たにセロトニン・トランスポーターが増やされて、
結局セロトニンの再取り込みは進むことになる。
これはシナプス間隙におけるセロトニン濃度の低下をもたらすので、
うつ状態の悪化ということになる。
ここで薬剤を増やすのだが、一時的には効いても、同様のことが起こり、いたちごっこになる。
この状態で薬剤が急に抜けたりすると
セロトニン・トランスポーター・ブロッカーがなくなるので
セロトニン・トランスポーターは全員が働くようになり再取り込みがどんどん進んで
シナプス間隙におけるセロトニン濃度は少なくなる
これもやっぱりうつ状態になる
再取り込みでため込まれたセロトニンは放出されやすくなりそのことでシナプス間隙のセロトニン濃度は
上がるのであるが再取り込みも進むのでどんどん回転する
回転している間に神経の疲弊が進む
疲れてしまうとそれもうつ状態につながる
こんなわけで、
セロトニン・トランスポーターとセロトニン・レセプターの両面から言えることであるが、
薬を使い続けると
もっとうつになりやすい体質を準備してしまうことになる。
するとSSRIというものはいったい使っていいのかどうかということになる。
個人的な意見としては、
セロトニンの部分的な動きにとらわれることなく、
神経保護作用として考えた方がいいのだろうとの印象を持っている。
セロトニンが増えればうつが楽になるというのなら、
吐き気がするのと同じ時期にうつが治ってもいいはずだと思う。
吐き気はまさにセロトニンによって起こるから、吐き気が起こるということはセロトニンが増えたということだからだ。
吐き気が先に出てうつが治るのはあとになることについてもいろいろな説明があるけれど、
わたしとしては、全般的に神経をダメージから守り、一時的に休止させて、回復を待つための環境を整えてくれる、
つまり神経保護作用があるのだとSSRIについて考えている。
ドパミンについてはもっと分かりやすい
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-07
*****
「セロトニン放出量」と「セロトニン感度」の両面から「セロトニン・トランスポーターとセロトニン・レセプター」の量を調整することができれば、よい治療である。
セロトニン感度とシナプス間隙セロトニン量の調整には薬剤があるが、
セロトニン放出量の調整はどのような要因があるのか
はっきりは分かっていない。
そこを調整するのが生活指導であり精神療法である。
その調整のためのコツが分かれば進歩だと思う。