「言葉で治療する」鎌田實

医師・看護師の言葉しだいで、治療の日々が天国にも地獄にもなる

というサブタイトルの本である
ーー
実際にこれは重大な問題で、二つの局面に分けて考えることができる。
一つは、普通に考えられるように、
医療従事者は特別の配慮をもって医療に当たり、患者さんの身体のケアと同時に心のケアをするというものだ
同じ薬でもどのお医者さんに処方してもらうかで効果が違う
そのことが分かっているから
治験計画では無作為割り付け二重盲検 randomized controlled trial , double blind などが施行される

治療者がどう思っているかが治療に影響を与えるのである。

ーー
ここまでは医学部で共通に学ぶべき事柄である。

しかし
二つ目の要素である、
医師・看護師の言葉を誤解して、治療の日々が地獄になるケースをどのように
解決するかは精神科的な要素が強くなる
もちろん、「そんなつもりではなかったのに誤解された」ということが起こらないように
多重の配慮が必要なのであるが
それでもうまくいかないケースはたくさんある
その場合の分析と対処が必要になる
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人間は、弱っているときには、やはり悲観的になりやすいし、被害的にもなりやすい。
そのことを踏まえた上で、対応が必要なのであるが、完全な対処法があるわけでもない。
たとえば高級宝石店でも行き違いは起こるし
高級レストランでもクレームは発生している
ーー
そんなわけで、
言葉で治療する というタイトルも、
二つの局面に分けられる
一つは治療者の配慮と熱意が患者にも伝わり、それが治療に本質的に重要であるという
プラクティカルでもあり、道徳の本でもあるような側面
もう一つは、「地獄」がどのようにして発生するのか、研究する側面である。
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強い磁石は強い反発も生むものであって
薄く親切な程度が一番人気が出るだろうと思う
この種の本の読者は癒されたくて読むのであるから
それ以上の余計なことは書いてはいけないのだろうと思う