空想的自己愛から現実的自己愛へ
人間は生まれてからしばらくは両親の元にいて
空想的自己愛を形成され強化される
子どもは親ばかの空想を真に受けている唯一の幸せな人間である
学童期・青年期になると同年代の子どもたちの実態を知るようになり
親が言っていた言葉は親ばかのせいだったのだと気がつく
同世代の人間集団はピラミッド構造になっていて
上には上がいるという社会である
その中で個人は自分の位置を確かめつつ現実と妥協していく
正直に言えばそれは自己愛の傷付きの連続である
しかしそうした傷付きの末に集団内での自分の適切な場所を見つける
それが自己アイデンティティの確立である
集団内での自分の位置が決まれば
パートナーも自然と決まる
結婚相手が見つからないという現状は
結局は自分の集団内での位置が決まっていないからで
ということはつまり
空想的な自己愛をまだまだ満タンにしているから
ぴったりの相手が見つからないのだということになる
最近では
こうした自己愛の傷付きに耐えられず
集団から遠ざかり
ネット社会の中で擬似的な自分の位置を獲得する場合がある
これは根本的には自己愛を幼児期のままに保っているものであって
現実社会の中で生きるには適さない自我である
世の中というものは金持ちと政治家と官僚とマスコミが運営しているものであって
そこにたどり着くためにはやはり現実のピラミッドの中で位置を獲得していくしかない
ネットが学校や会社の前段階のトレーニングとして有効ならば
集団に適応しにくい人にも有効な面があるのだが
現状ではむしろ幼児的・空想的自己愛の保存に適しているようで
外側へのなかなか一歩を踏み出せなくなってしまうようである
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余談であるが
女性の場合には、根本的な男社会の中で、どのように自分のポジションを決めていくか悩むところがある
男社会のピラミッドに割って入るには
女性の武器は使ってはいけないのだが
使えばこれは強力な武器である
しかし使った瞬間に自分は別のピラミッドを生きているのだと宣言していることになる
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政治の世界でも最近は世襲議員を制限しようという動きがあって
それはたぶん世襲議員は空想的自己愛を捨てきれずにいる人種であって
たたき上げの現実的自己愛の人種とは相容れないからであろうと思われる
実際それはそうで
一生食べていけるだけの財産があれば
何も心地よい空想的自己愛を捨てる必要はないとの気持ちとてもよく分かる
現実を生きることなんて召使いに任せておけばいいのだ
という気持ちもよく分かる