統合失調症とうつ

目の前に初診の患者さんがいて

うつ状態を呈している場合、単純に
うつ病と診断してはいけない。
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統合失調症の場合、初期の陰性症状としてうつ状態を呈することはよくある。
また統合失調症の陽性症状が終わったあたの疲弊性うつ状態であることがある。自分が統合失調症であると認識すること、また陽性症状の体験のトラウマは、精神を消耗させるに充分である。
また統合失調症の陽性症状が弱くなったあとの陰性症状を見ているのかもしれない。
また統合失調症にさしてドパミン遮断薬を使用して二次性のパーキンソニスムが起こり、その結果として無動・無気力になっているのかもしれない。
この場合、疲弊性うつ状態と陰性症状とパーキンソンニスムによるアパシーやアンヘドニアとを区別する必要がある。
おおむねを言うと、
陰性症状では、興味減退、意欲減退は呈するが、うつ状態に比較して憂うつ、悲哀、自責などは少ない。
アパシーでは意欲と興味の減退が主である。行動・認知・情動の動機付けの低下がアパシーであり、興味低下や喜び低下は起こるが憂うつは起こらないと議論されている。
アンヘドニアは失快楽症と言われていて喜びの低下が主となる。
パーキンソニスムに伴うアパシーとアンヘドニアと陰性症状との鑑別は、薬剤を調整してみることで区別がつく。
統合失調症の場合の自殺については、それに至るいろいろな経路が考えられるのだが、
うかつに賦活性の薬剤を出して自殺実行に至るのは危険なので
まずSDAを調整し、次にパルプロ酸を加えるといった慎重な選択をする治療者も多い。
陰性症状と見た場合にはSDAで対処する。
疲弊性うつ状態と見た場合にはSSRIを加える。
パーキンソニスムが関与していると見た場合には変薬するなどして対処する。
疲弊性部分が大きいと見た場合には
トラウマや疲労が回復可能で対処可能なものであることについて患者教育する必要がある。
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また認知症の始まりの局面でうつ状態を呈することはよくある。
さらに身体症状が先にあり、うつ状態を呈することがあり、パーキンソン病とか甲状腺機能異常症の場合である。生理周期に関係してうつ状態を反復する例は多く、また、クッシング病など副腎皮質ステロイドの異常も精神症状を呈することが知られている。
更年期障害で抑うつを呈することも多い。男性更年期も最近は言われていて、性機能の他に、抑うつをはじめとする精神機能の変調を訴えることもある。
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抑うつを呈している場合に、
経過を見ていけば、それが単極性のうつ病なのか、双極性障害なのか、統合失調症に伴うものなのか、認知症の始まりか、身体病に伴うものか、一時的な反応性のものか、区別することはできる。
しかし初診時にそれらの可能性を含めて、対処しなければならないので、難しい。
最も簡単な鑑別は年齢である。
30以下ならば第一は統合失調症を疑う。
30-50歳はうつ病を疑う。
50を過ぎていたら認知症の始まりも念頭に置く。
また遺伝歴も重要である。
家系内に統合失調症、うつ病、躁うつ病、てんかん、いずれが存在するときにも、これら内因性の精神疾患の存在を疑う理由になる。