ETCは江戸川ケーブルテレビではなくて
電気けいれん療法だ
「電気」というのは本当の電気で
昔は正弦波、最近はパルス波を用いている。
頭に二つ電極を設置して通電すると人為的な「てんかん発作」が生じる
そのあとで統合失調症や躁うつ病がよくなったりするので使われている
いかにも非人道的でいやな響きがあるので
一時は治療としても回避されていた
最近はけいれん療法といっても
実際には麻酔をかけて筋肉がけいれんしないように筋弛緩薬も使い
さらに呼吸管理もして実施するので
生命の安全性はかなり高い
無けいれん・電気通電療法なのだ
しかしそもそもなぜこの治療で統合失調症や躁うつ病やうつ病がよくなるのか
メカニズムは分かっていない
調べてみるとセロトニン系よりはドパミン系に効果があるようで
うつの中でもセロトニン系が関与しているものに効果があるのではないかと思う
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そもそもの歴史は
薬でてんかん発作を起こしやすくなる副作用のあるものがあって
それを使っててんかん発作が起こったら
統合失調症が治ってしまったという経験に始まる
薬の次は通電によってけいれんを起こすようになった
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最近のエビデンスでは統合失調症よりもうつ病で効果があるのだとの論文が多い
難治性うつ病のときにはECTを考えるというのがスタンダードな方法になっている
難治性というのは
うつ病のなかでも
何も食べない、薬も飲まない、喋らない、何度も死のうとする、他に方法がなくて
時間がたてば死んでしまうというようなケースである
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ECTを続けていると次第に効果が薄くなる
従っててんかん患者にECTを反復しているうちにけいれんが起こりにくくなり
結局少しずつ治ってくるというデータもある
なぜかはよく分かっていない
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無けいれんなのにどうしてけいれんが起こっていると分かるかといえば
最近の機械は通電と同時に心電図や脳波、筋電図を表示してくれるので、
てんかんに相当する信号が脳内を走っているかどうか分かるからだ
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慢性疼痛にも使われることがある
これも治療のメカニズムは分かっていない
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無動・無言・姿勢固定などを呈する場合をカタトニアと呼ぶ
昔の教科書ではカタトニアは統合失調症の一つの病型であると言われていた
緊張型(カタトニア、またはカタトニー)、破瓜型(ヘベフレニー)、妄想型(パラフレニー)などと下位分類されていた。
最近になってデータを検討してみると
カタトニアの原因病名としては統合失調症よりもうつ病に多い事が分かった
その場合にECTが有効であると分かっている
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悪性カタトニアというものがあり、
無動・無言、姿勢固定などの他に、体温上昇などを呈するもので、
これは本質的には悪性症候群と同じではないかとの解釈がある
つまり、悪性症候群とは、高力価ドパミンブロッカーによって引き起こされる悪性カタトニアであるとの理解である
この解釈で言えば、
統合失調症で見られるカタトニアの場合、
ドパミンブロッカーを増量してはいけないということになる。
姿勢固定などは
ハロペリドール静注などで急速によくなることもあるので使いたくなるが
そのことが悪性カタトニアを引き起こすことがある
その場合には
ベンゾジアゼピンに切り替えて、たとえばロラゼパム12㎎~8㎎程度の高用量を使いつつ、
経過を見る
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難治性うつ病にたいしてECTを行う場合、
リチウムを併用することで
再発率を下げることができるのではないかと議論されている
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PET研究によっても
ECTはセロトニンよりはドパミンに効いているらしいというので
うつ病とドパミンがかかわっている一例であるように思う
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統合失調症の経過の中でうつはときどき顔を出すのだが
発病前と急性期終了後のうつについては陰性症状との関連で議論される
発病前についてはスルピリドやベンゾジアゼピン、
急性期終了後にはSSRIなどの使用が言われている
統合失調症の急性期に見られるうつについては
統合失調症の症状そのものであるからドパミン遮断薬の効果によって乗り切るのがいいと言われる場合もある
しかし上記の悪性カタトニアと悪性症候群の議論を参考にすると
統合失調症の急性期におけるうつは悪性症候群と連なるカタトニアの一側面を観察している可能性があり、
その場合には、ドパミン遮断薬はむしろ減薬する必要があることになる