直訳と超訳 統合失調症とうつ病の合併について

直訳ではなんともよくわからないのでいろいろ考えているうちに超訳になってしまった例
英語で難しいことを言われると細かいところがよくわからない補うと頭の体操にはなるけれど訳文とは言えない感じになる
こうしてみると本文のねじくれ具合をを予想させる訳文の意味もかなりあるのだと納得できる
翻訳の方が分かりやすかったらなんかおかしいでしょう
(直訳)
統合失調症とうつ病の合併について
統合失調症の精神病症状と感情症状は精神医学の疾病分類の中心的なジレンマだったし、現在でもやはりジレンマである。ここではレビューしないが、実証的な研究によれば、特に、統合失調症と双極性障害は一次元のスペクトラムとして分布するらしい。またたぶん、多次元的スペクトラムとして分布するらしい。さらには、統合失調感情障害の疾病分類学的な位置づけについては、活発な議論が続けられており、様々な定義とアプローチの仕方があって、意見の一致は難しい。この二つの側面、つまり、「統合失調症と双極性障害は疾病としてかなり一致している」と「統合失調感情障害の難しい位置づけ」はこの論文の射程を超える大問題であるが、疾病分類学の重要な側面である。ここでは話題を限定して、精神病症状と単極性うつ病症状の併存状態をとりあげる。統合失調症の場合には大部分の症例で精神病症状とうつ症状の併存が見られる。これは昔から言われていることだが、同じくらいの割合で、原発性のうつ病患者の場合にも精神病症状とうつ症状の併存が多く見られる。Moellerは問いかけている:「統合失調症の症状には中核的な幻覚妄想状態もあるし、陰性症状、認知障害さらにはうつ症状が見られると言われているが、果たしてうつ症状は、統合失調症の多彩な症状の一部と考えてよいのか、あるいは、統合失調症とうつ病は併存症の考え方から言えば、区別すべきものなのか。」BartelsとDrakeによれば、統合失調症のうつ症状は3つに分けて考えることができる。(1)器質性原因から二次的に発生するうつ症状、(2)急性精神病エピソードに伴う「非器質性」うつ症状、(3)統合失調症の際に一時的ではなく起こる症状。たとえば統合失調症の前駆症状や精神病後抑うつは急性精神病の際に一時的に起こるうつ症状であるが、統合失調症の陰性症状は一時的ではない症状である。そのような考え方をすれば、統合失調症の場合に見られるうつ症状を構造的にとらえることができる。
抗精神病薬はそれ自身で神経学的な副作用を呈し、薬剤性パーキンソン症状、(たとえば寡動、感情表現の低減、仮面様顔貌、構音障害)、さらにはアカシジアによるイライラが起こる。そこれらは精神運動抑制や激越性うつ症状と混同される恐れがある。抗精神病薬はまた薬剤性のディスフォリア(不機嫌)を起こす可能性があり、おそらく脳の報酬系におけるドパミンブロックによると思われる。抗精神病薬はもともとうつ症状を引き起こすものだと言われている。統合失調症の人はほかの身体病にかかりやすいし物質使用障害を起こしやすい。身体病も物質使用障害もうつ症状を引き起こす可能性がある。アンヘドニア(失快楽症)、無為(abulia)、失語(alogia)、無欲動、自発意欲減退、引きこもりなどのような陰性症状がうつ症状と重なり合うことかあり、うつ症状と見間違うことがある。精神病症状後の士気喪失や絶望、孤独はうっすらと覆う不機嫌を引き起こす可能性がある。
統合失調症で古典的に言われているうつ症状はPPD(精神病後抑うつ)である。DSM-4TRの付録で定義されているように、統合失調症の急性期後に起こる大うつ病エピソードである。精神病後抑うつの古典的な定義は精神病エピソードによる喪失反応や心理的外傷反応(トラウマ)である。Rothは「精神病エピソードに続く抑うつ反応は対人関係不全に対しての全体的心理生物学的反応である」と書いている。精神病後抑うつと精神病エピソードの関係は不明確なままであり、うつ症状は精神病症状に対する反応であるのか、精神病症状が消退するときに認知が改善して起こるものなのかもはっきりしていない。うつ症状が陽性症状スコアとよく比例することや統合失調症の薬を飲めばうつ症状がよくなることは、精神病後抑うつは精神病陽性症状消退による認知の改善によるものである可能性を支持している。陽性症状が消えて、陰性症状が残った時期に、陰性症状を補うための反応が起こる。その反応が不足していると精神病後抑うつとなる。うつ症状は統合失調症の陰性症状に対する代償反応不全であることが昔から根強く言われている。
統合失調症でうつ症状があると予後は比較的よいと昔は言われていたものだが、証拠によれば反対のことが真実であるらしい。Mandelほかは、退院後1年間の211名の統合失調症患者を研究し、退院後の最初の数ヶ月でうつ症状を呈した患者の25パーセントは著名に悪化する傾向があった。Johnson は、急速に回復した後に一年以上たってうつ症状を呈した慢性統合失調症患者はそうでない患者よりも再発しやすいと報告している。TsuangとCoryellの古い研究やSimほかの最近の研究では統合失調症よりも統合失調感情症で予後がよいとは言えないと結論されている。
統合失調症患者では一般人口におけるうつ病罹患率よりもうつ症状を引き起こす可能性か高い。多くの報告では、精神病症状を呈した人の中でうつ症状を呈した者の割合が表4にまとめられている。予想されるとおり、うつ症状の割合には大きな違いがある。統合失調症や精神病の定義が違うので、研究対象は一様ではなく、またうつ症状が起こる時期の設定も様々で、点有病率(point prevalence)で評価する方式から多年にわたるまでている。しかしながら、SirisとBenchのすばらしいレビューでは、ここに掲げた諸研究よれば、統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、およそ25パーセントとみられる。
大うつエピソードは精神病症状に発展しやすいことを考えてみるのも有益である。実際に感情障害の経過の中でうつ症状を呈する患者が精神病症状を呈することは多い。しかし、統合失調症患者がうつ症状を呈する場合ほどは研究されていない。OhayonとSchatzbergはヨーロッパ諸国の18980名の一般人口研究で点有病率を研究した。うつ症状のなかで重要なキーとなる症状を少なくとも一つ呈するのは16.5パーセント、その中で妄想や幻覚があったのは12.5パーセントであった。DSM4の大うつエピソードを完全に満たす454名のうち、18.6パーセントが妄想や幻覚を経験していた。大うつ病と診断された人の14パーセント、大うつ病で初回入院した人の16.9パーセントがうつエピソードの経過中に精神病症状を経験していた。
進行性の統合失調症のハイリスクグループと超ハイリスクグループの研究で示されているのは、精神病症状が発現する前の時期と精神病症状が発現しているさなかでのうつ症状が著明に多い事である。Corbblattほかは、精神病症状が現れつつあるさまざまな時期での62名の思春期症例についての研究の中で、感情障害とひきこもりを「潜在脆弱性中核」の一部と考えている。Hafnerほかは232名の未治療の統合失調症初回入院の、成人患者と十代患者についての詳細な病歴と、130名の健康対照群と130名の人口統計学的に調整された130名のうつ病の初回入院患者の病歴を研究した。130名の統合失調症患者と原発性うつ病群を比較して、うつ病と統合失調症で10のもっとも頻発する症状を調べると、13の症状が同時に現れ、高度に重なり合っていた。13の共通症状の中で8つは頻度が変わらなかった。うつ病と統合失調症のどちらでも病初期に中核的うつ症状と陰性症状が見られ、密接に並行した経過を示した。思考障害、集中困難、エネルギー喪失、ひきこもりなどが陰性症状である。統合失調症では、驚くにはあたらないことだが、陽性症状が多く見られ、多いと入院に至る。うつ病と統合失調症のどちらでもうつ症状のふたつの病気の初期症状は、最初期症状に共通の中核精神病理を反映したものだと著者等は結論している。また彼らは統合失調症患者のうつ症状のピークは精神病症状のピークと一致していると書いている。
統合失調症とうつ病の神経生物学に関係して、そして、病因論的および精神病理学的な一致または重なり合いの証拠に関係して、多くの研究が、局所的な伝達物質についてうつ病と統合失調症で異なっており、両者で一致することはまれであると報告している。うつ病の機能的脳画像では前頭葉前部の代謝の減少と、その部位での脳血流量の減少が示されているのだが、統合失調症とうつ病のワーキング・メモリー・タスクにおいて、直接比較した脳血流量変化はうつ病よりも統合失調症で、大きな脳血流量減少を示していた。うつ病と統合失調症で海馬体積の減少が報告されていて、最近の研究では、ミエリンに関係する遺伝子と280人の、統合失調症患者での臨床特徴とが関係していると確認されている。統合失調症にうつ病を併発しているかいないかでそれぞれ違いがあると報告されている。研究者によれば、グリコプロテインM6A遺伝子(GPM6A)、これは動物においてストレスが海馬に与える影響を調節している部位であるが、それは統合失調症の中で、うつ症状の危険が最も高いサブグループと関係している。
対照的に、機能性脳画像でもっとも確実にみられている所見は、正常比較対照に対してうつ病では扁桃体で脳血流量が増加しグルコース代謝が増加している。この所見は統合失調症では見られないもので、統合失調症ではむしろ扁桃体の活動が低下している。うつ症状を伴う統合失調症と伴わない統合失調症では、神経生物学的に違いがあるのか、明確な所見が得られていない。うつ症状を伴う統合失調症の場合に、第二世代抗精神病薬が有効であろうと言われていて、ドパミンブロックによる不機嫌と錐体外路症状を回避できる。第二世代抗精神病薬はいろいろなセロトニンレセプターにも親和性があるし、直接、間接の有利さがある。
Tollefsonほかは、オランザピンを例として、統合失調症の場合にうつ症状への直接の効果がある可能性が言われている。統合失調症におけるうつ症状の経過観察とオランザピンまたはハロペリドールによる治療研究では、オランザピンがより有効であり、その効果の56パーセントは、陰性症状に対する二次的なものと言うより、あるいは錐体外路症状の緩和による二次的なものでもなく、「原発性の」うつ症状に対して効いている。似たような分析は、他の第二世代抗精神病薬についても言われている。さらに、クロザピンは抗自殺作用が優れていると言われているのだが、実際にはクロザピンとオランザピンは同等程度の効果を持つ。さらに第二世代抗精神病薬は双極性障害で広く用いられており、そのことは、感情障害に対しての効果が、(陽性症状を減らすことによってうつ症状を減らすという)統合失調症の精神病への効果とはある程度独立であることを間接的に示している。
別の見地から見ると、統合失調症の抗うつ薬治療は比較的注目されなくなっており、それは統合失調症の治療に際してうつ症状の見られることが多くなっていて、抗うつ薬と抗精神病薬を使う割合が薬30パーセントにもなっていることも一因である。Sirisほかは、イミプラミンを補強すると精神病症状の再発が少なくなると報告している。第二世代抗精神病薬に加えての補強療法については情報が足りない。
第二世代抗精神病薬の神経可塑性への効果の点で考えると、これらの薬は統合失調症のさいに合併するうつ症状を治療するだけではないのかどうかが、興味深い。
Cornbattほかによれば抗うつ剤を投与された精神病発病前の思春期患者さんは、抗精神病薬を投与された患者さんと同程度に回復している。厳しく統制された研究ではないけれども、抗うつ剤が精神病の発展に影響を与えるらしいことは、興味深い。
この節では以下のことが結論として言える。(1)統合失調症においてうつ症状はしばしば見られる。(2)うつ症状は統合失調症の障害をさらに重いものにするし、うつ症状は精神病症状の再発率を高める。(3)精神病後抑うつ(PPD:Post Psychotic Depression)は統合失調症に大うつ病が起こる「不完全型」かもしれない。(4)結論はできないが、可能性としては、薬剤が直接にうつ症状や自殺に影響しているかもしれない。精神症状が改善すればうつ症状が改善するというものでもないらしい。(5)統合失調症の下位グループとしてうつ症状を伴う統合失調症を考えるのは、直感的には同意できるが、文献もないし、神経生物学的な研究も不足している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(超訳)
統合失調症とうつ病の合併について
 統合失調症の精神病症状と感情症状は、精神医学の疾病分類の一大ジレンマである。
 統計研究によれば、統合失調症と双極性障害は一次元連続体(スペクトラム)として分布するようであるし、多次元的スペクトラムとして考えればさらに確かに、両者の関係を説明できるらしい。つまり、それぞれ独立のものとは言えないらしい。つまり、一つの変数に沿って並べるとおおむね連続体として分布し、さらに複数の変数に沿って並べると、もっとよい連続体になるので、両者は隠された変数で制御される表現型ではないかということになる。
 一方、「統合失調感情障害」の疾病分類学的な位置づけについては、いまも活発な議論が続けられており、様々な定義とアプローチの仕方があって、意見の一致は難しい。
 この二つの側面、つまり、「統合失調症と双極性障害は疾病としてかなり一致している説」と「統合失調症と双極性障害は疾病として独立しているが、ときに重なり合うことがあり、重なった部分を統合失調感情障害と呼ぶ説」のいずれが妥当であるかは、この論文の射程を超える大問題であるが、現在もやはり精神科疾病分類の重要問題であることに変わりはない。ここでは話題を限定して、精神病症状と単極性うつ病症状の併存について論じる。
 統合失調症の場合には多くの症例で精神病症状とうつ症状の併存が見られる。これは昔から言われていることだが、逆に同じくらいの割合で、原発性のうつ病患者の場合にも精神病症状とうつ症状の併存が多く見られる。 Moellerは「統合失調症の症状には中核的な幻覚妄想状態もあるし、陰性症状、認知障害さらにはうつ症状があるが、果たしてうつ症状は、統合失調症の多彩な症状の一部と考えてよいのか、あるいは、統合失調症とうつ病とが併存症であるとして、区別すべきものなのか」と書いている。つまり、本質的に相伴うものなのか、偶然重なることがあるのか、議論はあるが、結論は得られていない。 BartelsとDrakeによれば、統合失調症のうつ症状は3つに分けて考えることができる。(1)統合失調症の器質性原因から二次的に発生するうつ症状。つまり、統合失調症の器質性原因としてドパミンの障害を考えるとして、ドパミンの変動から説明できるうつ症状。(2)統合失調症の急性精神病エピソードに伴う「非器質性」つまり「心因反応性」うつ症状。(3)統合失調症の特徴的な時期に起こるうつ症状。たとえば統合失調症の前駆症状としてみられるうつ症状、急性精神病が落ち着いた時期に起こる精神病後抑うつとしてのうつ症状、さらには残遺期にみられる統合失調症の陰性症状類似のうつ症状などがある。(1)ではうつ症状が精神病症状と消長をともにするのに対して、(3)は統合失調症の経過の中で特徴的に時期に現れる。 このような分類をすれば、統合失調症の場合に見られるうつ症状を構造的にとらえることができる。
 抗精神病薬はそれ自身で神経学的な副作用を引き起こし、薬剤性パーキンソン症状(たとえば寡動、感情表現の平板化、仮面様顔貌、構音障害)やアカシジアによるイライラを起こす。これらは薬剤副作用であるが、うつ症状症状そのものである精神運動抑制や激越性うつ症状と混同される恐れがある。 抗精神病薬はまた薬剤性のディスフォリア(不機嫌)を起こす可能性があり、おそらく脳の報酬系におけるドパミンブロックに原因すると思われる。抗精神病薬はもともとうつ症状を引き起こすと言われている。 統合失調症の人はほかの身体病にかかりやすいし物質使用障害を起こしやすい。さらには身体病や物質使用障害がうつ症状を引き起こす可能性がある。 アンヘドニア(失快楽症)、無為(abulia)、失語(alogia)、無欲動、自発意欲減退、さらには引きこもりなどのような陰性症状が、うつ症状と混同されることがある。 精神病症状後の士気喪失や絶望、孤独はディスフォリアを引き起こす可能性があり、これもうつ症状と混同される可能性がある。
 統合失調症で古典的に言われているうつ症状はPPD(精神病後抑うつ)である。DSM-4TRの付録の定義によれば、PPDは統合失調症の急性期後に起こる大うつ病エピソードであるが、精神病後抑うつの古典的な定義によれば精神病エピソードに引き続く喪失反応や心理的外傷反応(トラウマ)であり反応性のものと解釈されている。 Rothは「精神病エピソードに続く抑うつ反応は対人関係不全に対しての全体的心理生物学的反応である」と書いている。 精神病後抑うつと精神病エピソードの関係は不明確なままであり、うつ症状は精神病症状に対する心理的反応であるのか、精神病症状が消退するときに認知が改善して起こるものなのか、はっきりしていない。 うつ症状が陽性症状スコアとよく比例することや、統合失調症の薬を飲めばうつ症状がよくなることは、精神病後抑うつは精神病陽性症状消退による認知の改善によるものである可能性を支持している。 陽性症状が消えて、陰性症状が残った時期に、陰性症状を補うための反応が起こる。その反応が不足していると精神病後抑うつとなる。 うつ症状は統合失調症の陰性症状に対する代償反応不全であることが昔から根強く言われている。
 統合失調症でうつ症状があると予後は比較的よいと昔は言われていたものだが、証拠によれば反対のことが真実であるらしい。 Mandelほかは、退院後1年間の211名の統合失調症患者を研究し、退院後の最初の数ヶ月でうつ症状を呈した患者の25パーセントは後に著明に悪化する傾向があったと報告しいる。Johnson は、急速に回復した後に、一年以上経過してうつ症状を呈した慢性統合失調症患者は、そうでない患者よりも再発しやすいと報告している。TsuangとCoryellの古い研究やSimほかの最近の研究では、統合失調症よりも統合失調感情症で予後がよいとは言えないと結論されている。つまり、統合失調症でうつ症状がみられる場合には、予後が悪い。
 統合失調症患者では一般人口におけるうつ病罹患率よりもうつ症状を引き起こす可能性か高い。多くの報告で精神病症状を呈した人の中でうつ症状を呈した者の割合が表4にまとめられている。予想されるとおり、うつ症状発生の割合には大きな違いがある。その原因として統合失調症や精神病の定義が違うので対象患者は一様ではないこと、また精神病症状が起こったあとどの時期にうつ症状が起こるかについての時期の設定もさまざまで、同時から数年後に至るまでさまざまであることがあげられる。 そうした困難はあるものの、SirisとBenchのすばらしいレビューによれば、諸研究を通観すれば、「統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、最頻値としておよそ統合失調症患者の25パーセントがうつ症状を呈する」とみられる。
 逆に、大うつエピソードは精神病症状に発展しやすいことを考えてみるのも有益である。実際に感情障害の経過の中でうつ症状を呈する患者が精神病症状を呈することは多い。しかし、統合失調症患者がうつ症状を呈する場合ほどは研究されていない。 OhayonとSchatzbergはヨーロッパ諸国の18980名の一般人口研究で点有病率を研究した。うつ症状のなかで重要なキーとなる症状を少なくとも一つ呈する人は16.5パーセント、その中で妄想や幻覚があったのは12.5パーセントであった。DSM4の大うつエピソードを完全に満たす454名のうち、18.6パーセントが妄想や幻覚を経験していた。大うつ病と診断された人の14パーセント、大うつ病で初回入院した人の16.9パーセントがうつエピソードの経過中に精神病症状を経験していた。
 進行性の統合失調症のハイリスクグループと超ハイリスクグループの研究によれば、精神病症状を呈する前の時期と、精神病症状を呈しているさなかでのうつ症状が著明に多い。 Corbblattほかは、精神病症状が現れつつあるさまざまな時期の62名の統合失調症思春期症例についての研究の中で、感情障害とひきこもりを「潜在脆弱性中核」の一部と考えている。 Hafnerほかは232名の未治療の統合失調症初回入院の成人患者および十代患者についての詳細な病歴と、130名の健康対照群とそれに統計的に対応する130名のうつ病の初回入院患者の病歴を研究した。130名の統合失調症患者と原発性うつ病群を比較して、うつ病と統合失調症でもっとも頻発する症状を調べると、13の症状が同時に現れ、高度に重なり合っていた。13の共通症状の中で8つは頻度が変わらなかった。うつ病と統合失調症のどちらでも病初期に中核的うつ症状と陰性症状が見られ、密接に並行した経過を示した。思考障害、集中困難、エネルギー喪失、ひきこもりなどが陰性症状である。当然であるが、統合失調症では陽性症状が多く見られるし、陽性症状が多いと入院に至る。うつ病と統合失調症のどちらでも、病気の初期症状としてのうつ症状は、最初期症状に共通の中核精神病理を反映したものだと著者らは結論している。また彼らは統合失調症患者のうつ症状のピークは精神病症状のピークと一致していると書いている。
 以上のように、症状研究では、統合失調症の固有症状とうつ症状は分離できない。
 一方、神経伝達物質研究の多くでは、うつ病と統合失調症では関係している神経伝達物質が異なっており、両者で一致することはまれであると報告されている。 うつ病の機能的脳画像では前頭葉前部の代謝の減少と、同じ部位での脳血流量の減少が示されているのだが、統合失調症とうつ病の人にワーキング・メモリー・タスクを課したとき、脳血流量変化を直接比較すると、うつ病よりも統合失調症で大きく脳血流量が減少していた。うつ病と統合失調症で海馬体積の減少が報告されているし、最近の研究では、ミエリンに関係する遺伝子と統合失調症患者の臨床特徴とが関係していることが280名の患者について確認されている。その場合特に統合失調症にうつ症状を併発していることと関係していた。 グリコプロテインM6A遺伝子(GPM6A)はストレスが動物の海馬に与える影響を調節している部位であるが、この遺伝子が統合失調症の中でうつ症状の危険が最も高いサブグループと関係していると報告されている。
 機能性脳画像での確実な所見のひとつとして、正常比較対照に対してうつ病では扁桃体で脳血流量が増加しグルコース代謝が増加している。この所見は統合失調症では見られないもので、統合失調症ではむしろ扁桃体の活動が低下している。うつ症状を伴う統合失調症と伴わない統合失調症についての神経生物学的数値の直接比較研究について、明確な結論を示している論文はない。
 うつ症状を伴う統合失調症の場合に、第二世代抗精神病薬が有効であろうと言われていて、これを使えばドパミンブロックによるディスフォリアと錐体外路症状を回避できる。第二世代抗精神病薬はいろいろなセロトニンレセプターにも親和性があるし、直接にも間接にも有利である。
 Tollefsonほかは、オランザピンを例として、統合失調症の場合にうつ症状への直接の効果がある可能性を指摘している。 統合失調症におけるうつ症状の経過観察とオランザピンまたはハロペリドールによる治療研究では、オランザピンのほうが有効であるとされている。その効果の56パーセントは、陰性症状改善による二次的なものでもなく、あるいは錐体外路症状の緩和による二次的なものでもなく、「原発性の」うつ症状に対して効いている。似たような分析は、他の第二世代抗精神病薬についても言われている。さらに、クロザピンは抗自殺作用が優れていると言われているのだが、実際にはクロザピンとオランザピンは自殺に関して同等程度の効果を持つ。 さらに第二世代抗精神病薬は双極性障害で広く用いられており、このことは感情障害に対しての効果が(陽性症状を減らすことによってうつ症状を減らすという)統合失調症の精神病への効果とはある程度独立であることを間接的に示している。
 統合失調症の際の抗うつ薬治療は比較的注目されなくなっているのだが、それは統合失調症の治療に際してうつ症状が見られることがあまりに多くなっていて、抗うつ薬と抗精神病薬を使う割合が約30パーセントにもなっていることも一因である。 Sirisほかは、抗精神病薬にイミプラミンを補強すると精神病症状の再発が少なくなると報告している。 第二世代抗精神病薬に加えて薬剤を用いる補強療法については特に情報が足りない。
 第二世代抗精神病薬は統合失調症の際に合併するうつ症状に効果があるだけではなく、躁うつ病やうつ病、躁病でも効果があることから考えると、神経可塑性への効果があるのではないかと興味が持たれる。
 Cornbattほかによれば抗うつ剤を投与された精神病発病前の思春期患者は、抗精神病薬を投与された患者と同程度に回復している。厳しく統制された研究ではないけれども、抗うつ剤が精神病の進展を抑制するらしいことは、興味深い。
 この節では以下のことが結論として言える。(1)統合失調症においてうつ症状は考えられているよりしばしば見られる。(2)うつ症状は統合失調症の障害をさらに重いものにするし、うつ症状は精神病症状の再発率を高める。(3)精神病後抑うつ(PPD:Post Psychotic Depression)は心因性反応から生じるものではなく、また、認知の改善によるものでもなく、統合失調症に大うつ病が伴って起こる「不完全型」かもしれない。(4)結論はできないが、薬剤が直接にうつ症状や自殺に影響している可能性がある。薬剤により精神症状が改善すれば、うつ症状が改善するというだけでもないようである。(5)うつ症状を伴う統合失調症を統合失調症の下位グループとしてある程度独立したものと考えるのは直感的には同意できるが、文献もないし、神経生物学的な研究も不足している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(以下、感想)「統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、最頻値として、およそ統合失調症患者の25パーセントがうつ症状を呈する」というのはそんな感じだと思うけれどそんなのは別に面白くもない話で、もともと統合失調症と分かっていればなにも驚くこともない。治療としても、論文に書かれているように、ドパミン系の病理と見ればSGAを調整するし、セロトニン系の病理と見ればSSRIやSNRIなどで調整する。またドパミン系もセロトニン系・ノルアドレナリン系も、お互いに影響し合っているし、作用が全く逆ということもなくて、いずれも神経系を保護するものである点は一致している。
しかし、初診で「うつ症状」が確認された患者さんの中で何%が「実は統合失調症なのだけれど、その部分症状としてうつ症状を呈している、またはその前駆症状としてのうつ症状、また精神病後抑うつ、または陰性症状、またはどこかで出された薬剤によるパーキンソン、アカシジア、またはアキネジア」なのか、その数字は興味がある。今、これからどう診断して治療するかにかかわってくるからだ。治療の第一手が違ってくる。
その場合に、病前性格や症状経過で厳密に診断することはできないというのが学問の結果であるらしい。
ということは、現在症で厳密に分けることもできないし、病前性格や経過で分類することもできないのだから、一体のものなのではないかとの疑いは発生する。それを裏付けるのが最近の薬の相互乗り入れである。第二世代抗精神病薬はうつ症状に有効であるし、抗うつ剤は精神病症状に有効であるというのだから、垣根はないのではないかとの意見も当然配慮されるべきだと思う。
そうは言うものの、厳密には決められないんですと言って、すますことができないのも、臨床現場の現実である。確定できないながらも、患者さんにとって最善の選択をしないといけない。
昔からそのあたりの事情は言われていてスルピリドが便利に使われていたものだった。
つまり本質的には何も変わっていないのであって、ということは、進歩もないけれど、大きな変更もないということなのかもしれない。諸説はあるものの、諸説があるという安定した状況が続いていると言えるかもしれない。
統合失調症と感情障害を連続体としてみる方式は一方では感情障害を根本とした単一精神病観となるこれはこれでなかなか強力である
また一方で統合失調症を根本とした単一精神病観に近いものを構成することも可能であり、これもまた強力な説明力を持つ。増して、躁うつ病の精神病的側面、つまり、現実検討の喪失を問題にすれば、根本は共通で、症状の現れる方面が違うだけと言えないこともない。
病前性格を対立的なものとしてとらえるとしてそれは神経伝達物質説とは相容れないセロトニン系病理の病前性格とドパミン系病理の病前性格が対立的・相反的であるとは考えにくい
経過診断を用いるとしてそれもなかなか難しい経過を見極めてからの治療などはあり得ないのであって診断学としても役に立たない診断学と言えないこともない
やはり現在の症状から次の一手を決定したいのだが子細に検討すると精神病症状とうつ症状は一体となっており、あるいはそうでない場合でも、時期を前後してある程度の傾向を持ってあらわれるのであって、全く独立にあらわれるのではない。
このところもう何十回も同じ話を繰り返しているのだがなんだか核心に至っていないもどかしさがある。
もうすこしクリアにできるはずと思うのだけれど。