愛情は時間がたち困難を克服し
次第に深まるものだけれど
恋愛感情そのものは
時間とともに薄れる傾向がないでもない
世の中には特殊な記憶障害の人がいて
5分くらいですべてを忘れる
という設定の映画がある
すると記憶障害の男性にとってはすべては不思議で新鮮なので
同じ女性に何度でも最高の興奮を感じている
相手の女性にとっては新鮮でも何でもなくて
興奮は冷めてくる
だんだん「こんなにいつも興奮しているのは、ただ病気のせいなんだわ」と気がつく
そして自分も最初はこんなふうに興奮していたのかと発見してうんざりしてしまう
記憶障害のその男は記憶障害のゆえに愛情を深めることができない
恋愛の一時的な興奮を繰り返すだけである
ーー
とまあ、そんな感じの話をして
ちらっと思うのは
一時的な興奮だけがリアルだと言い張る人もいるだろうということだ
だって、愛情を深めようとしていろいろと努力してそれが駄目だった時のダメージは
時間をかけているだけに大きすぎるのだ
特に二十代の十年などは取り返しのつかない貴重な時間である
ーー
しかし一方でお互いに時間を共有して教育しあい影響しあった二人の人生はかけがえのないもので
ひとりでは決して辿ることのなかった幸せな航跡を描いているだろうと思う
そのようになった場合は恋愛感情は愛情の歴史のきっかけに過ぎない程度の意味合いになる
たぶん偶然だったけれどいい偶然だったと思えるようになる
そのあとの愛情の歴史はむしろ必然である
そうありたいものだ