歳月人を待たず 陶淵明

雜詩其一

  人生無根蔕  人生 根蔕なく
  飄如陌上塵  飄として陌上の塵の如し
  分散逐風轉  分散し風を逐って轉じ

歳月人を待たず(陶淵明:雜詩其一)

  此已非常身  此れ已に常の身に非ず
  落地爲兄弟  地に落ちては兄弟と爲る
  何必骨肉親  何ぞ必ずしも骨肉の親のみならんや
  得歡當作樂  歡を得なば當に樂しみを作すべし
  斗酒聚比鄰  斗酒 比鄰を聚めよ
  盛年不重來  盛年 重ねては來たらず
  一日難再晨  一日 再びは晨なりがたし
  及時當勉勵  時に及んで當に勉勵すべし
  歳月不待人  歳月 人を待たず

 

人間の生には(植物のような)しっかりとした拠り所がなく、ひらひらと舞い散るさまは路上の塵のようだ、ばらばらになって風に吹かれて飛び散り、もとの通りに居続けることはない

この世に生まれたからにはみな兄弟だ、骨肉の間柄だけではない、歓楽の機会があればすべからく楽しもう、酒があれば近所の連中を集めようではないか、

盛りの年は二度とはない、今日という日は再びは来ない、時に及んでまさに行楽を楽しもう、歳月は人を待ってはくれないのだ