社会経済的地位、健康行動、および死亡率
Socioeconomic Position, Health Behaviors, and Mortality
2010 April 08健康状態における社会経済的勾配の存在を示した多くの研究では、「貧しいより裕福なほうがよい」というメッセージが明示されている。しかし、こうした健康格差の背景にあるメカニズムは依然として明らかになっていない。Londonの縦断的研究において、健康行動が社会経済的地位および死亡率とどのように関連するかが評価された。1985年から2009年にかけて、英国の10,000人近い公務員がフォローアップされた。
性別と年齢で調整した後、社会経済的地位がもっとも低い人々の全死因死亡率は、もっとも地位が高い人々の1.6倍であった。ベースラインの健康行動(喫煙、アルコール摂取、食事、身体的活動)で調整したところ、社会経済的地位が高い人々に対する社会的地位が低い人々の全死因死亡率のハザード比(hazard ratio:HR)は1.31に低下した。さらに、ベースライン時および縦断的に健康行動を調整するとHRは1.14に低下し、もはや統計学的有意水準に達しなかった。
コメント:社会経済的地位、健康行動、および死亡率の関連に関するこの研究は、ベースライン時および縦断的に健康行動を調整した点で独特である。社会経済的階層にわたる死亡率の差は、少なくとも健康保険に加入している英国の公務員の間では、主に健康行動により説明できることが見出された。われわれは、個人の素因あるいは特性が、不健康な健康行動と社会経済的地位の両方を導くという結論を導きがちである。社会的、経済的、およびその他の系統的因子が、個人が特定の健康行動を採用する際に重大な影響を及ぼすと主張する人も多いであろう。