港区下積み生活

何かの説明会で

なんだか聞いたことのある声だなと思って
マイクの方をよく見ると案内役は有名な誰かだった
ホテルのトイレに入ったら巨人軍終身名誉監督とすれ違ったり
ここは港区なんだから
そういうこともあるだろうと思うが
逆に不幸も感じる
仕事で出会う人はもう大部分が年下だ
同年代の人は殆どいない
同年代はもう引退してほどほど豊かな地域に住んでいる人が多い
たとえば自由が丘、田園調布、さらに飛んで江ノ島とかそのあたり
海岸を犬を連れて歩く、というか、犬に引っ張られて砂浜をウォーキングする
とても普通の人は住めないような高級住宅街に居を構えているその人は
話を聞くと年の半分位は家に帰っていないようだ
ホテルに泊まったり出張したり海外に行くと長いことも多い
なにしろギリシャで人にものを教えている
イタリアの貴族の別荘だった建物にバカンスに出かける
それなら高級住宅もムダでただ税金が高いだけじゃないかと言ったら
それ以外に住みたいところもないし親からの相続だから「仕方ない」という
こっちは六畳一間の学生用アパートに毎日へばりついて
年中暑いとか寒いとか言っているというのに
どうしてお話する機会があるのか不思議なくらいだ
それも不幸感の原因である
若いときにも下積みの苦労をして
年をとってもやはり下積みの苦労をして
全然報いられていない
あの世に行ったらぜひ神様と交渉(性交渉ではない)して幸せになりたいものだと思う
金持ちからバリ島の話はいくつか聞いているので知識はあって
どこのホテルは動らしいとか言えるけれど
実際に行ったことはないし
これからも行くお金も時間もない
虚数のような知識と言葉があるだけで
虚しいといえば虚しい
いっそ全く知らなければよかったのにとも思う