医師の平均寿命

次のような記事があった
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 紺屋の白袴ではないが医師自らの平均寿命は何歳なのでしょう。国民平均寿命と比べて長命?
 わが国の平均寿命が伸びた主因は医療である、とわれわれは主張しています。ならば「医師の寿命は、より長命?」「診療科別にみたら寿命の最も長い診療科は?」「寿命の短い診療科の医師は医療に恵まれていない?」「わが診療科は超多忙だ!という診療科医師の平均寿命は他診療科と比較して短命?」などなど、われわれは自らの寿命を日常的に気にすることはありませんが、英国医師会は自らの労働負荷(診療科)と寿命の関係を1980年代に調べました。
 調査結果は「British Medical Journal」に発表されましたが、いま私の手元にその論文がありません。今回のコラムは私の記憶にあるもので書きますので、定性的になる粗雑さはご容赦ください。
 結果は①病院内科勤務医の平均寿命が最長、②反対に最短は小児科医、③診療科で多発する傷病がある、が私の記憶にあります。
 結果へのコメントは①に関しては計画的に仕事ができるから、②に関しては仕事が非常に不規則であり親への説明などストレスが強大である、③に関しては例えば麻酔科女医には流産が多いでした。いずれにしても英国医師を対象にした調査結果とその意味づけだ、と留意しておくことは必要ですが、英国医師は自らのことを気にし、自らのことをデータで国民に示しました。
 ちなみに表題にあるテーマを現役医師を含む大学院生に質問すると、寿命最短の診療科は外科、と回答します。小児科とはまず回答しません。われわれはもちろん正解を知らないので、私は上記で示した英国雑誌の論文を引用して寿命最短の診療科を説明するとおおかたの院生は納得してしまいます。なぜ納得するのでしょうか? 「データで示された客観的な比較であるから」「英国医師会は全ての医師が入会しており、且つ全数調査なのでサンプリング・バイアスが小さいから」「小児科医が寿命最短であることの理由の説明に納得できるから」が主な納得の理由であると言っていました。
 この調査結果が英国の医療政策・経営・管理に与えた影響は承知していませんが、少なくとも国民と医師との間に対話が始まるベースができた、と当時の私は喜んでいました。医師の診療科と寿命という指標から見てではありますが、その間の関連性に国民が関心を示し、さらに関連性の意味づけを理解し、小児科医の苦労への注目が始まったと聞いています。
 こども病院の小児科医から「子どもに注射するのは大人にする苦労の3倍はしている、なのに診療報酬点数は大人と同じ!」と聞き驚いていました。
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 計画的な仕事をしてストレスをためない
 当たり前なことだけれど、難しい
 できるぎりぎりまでがんばろうとするのも当たり前なことで、
 一方ではいつも無理をしていてはいけないので
 その間の加減が難しい
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たしかに薬剤の量で言えば子供は少ないし
注射の苦労は大人より大きい
面接の時間はどうだろうかとも考える
数学の問題を早く解くとほめられるだろうが
ゆっくり考えていたからたくさんご褒美がもらえるなんて聞いたことがない