中高年に増える摂食障害 育児中でも50代でも…ダイエットへ
2010年01月20日 読売新聞 朝刊
拒食症や過食症などの「摂食障害」は、若い女性の病気というイメージがあるが、中高年でもこの病気に苦しむ人が少なくないことが分かってきた。自助グループなどでは「『この年で摂食障害なんて恥ずかしい』と思わず、助けを求めてほしい」と呼びかけている。
3食はサプリ
神奈川県藤沢市の女性(50)は、3年前に拒食症になった。それ以前の体重は、身長160センチに対し、体重55キロ。決して太りすぎとはいえないが、「自分の中での理想体重は45キロ。どんなに頑張ってダイエットしても50キロまでしかやせられない自分を太りすぎで醜いと感じ、自分に自信が持てませんでした」。
ところが、3年前に夫が入院、心労から食欲がなくなり、体重が3か月で10キロ減った。これがきっかけで、「体重を減らすことが面白くなり、拒食にはまりました」。1日3食をすべてサプリメントで済ませ、食べ物はほとんど受け付けなくなってしまった。
摂食障害は、思春期に過剰なダイエットなどがきっかけとなって発症することが多いといわれている。しかし最近は、この女性のような中高年の患者も増えているという。
横浜市にある摂食障害の女性のための通所施設「ファルク」には現在、10人の女性が通っているが、このうち8人が30歳代以上で、最高齢は66歳。48歳の女性は、18歳から拒食と過食を繰り返し、11年前に長男が生まれてからは、育児やママ友との人間関係のストレスから、症状が悪化することもあったという。
ファルク所長の細野直子さん(50)は、「子育て中の母親や、中高年女性の中にも、摂食障害で苦しむ人が増えていることを感じる」と話す。
摂食障害に詳しい成増厚生病院(東京)診療部長の後藤恵さんは、「今は50歳でも60歳でもきれいでいたい女性が多い。以前は子育て中は症状が出ないことが多かったが、最近は、子育て中でもおしゃれをしたいお母さんが多く、摂食障害に陥りやすいのでは」とみる。
背景に自己否定
摂食障害の自助グループ「日本アノレキシア・ブリミア協会(通称ナバ)」(東京都世田谷区)でも10年ほど前から、30歳代以上の人からの相談電話が増え始め、現在は、本人からの相談電話の半数を占める。新規の相談もあるが、10年以上前に会員だった人が、中高年世代となり、再び助けを求めてくるケースも多い。
代表の鶴田桃エ(ももえ)さん(47)は、「摂食障害の背景には、ありのままの自分を受け入れられない自己否定がある場合が多い。症状が治まっても、その根っこが未解決ならば、新たな困難にぶつかった時に、再び発症してしまう」と話す。
ファルクに通う66歳の女性は「一人で悩んでいる中高年の方に、同年代の仲間がたくさんいることを伝えたい」という。ファルクでは、摂食障害について広く知ってもらうため、3月7日に横浜でセミナーを開く。問い合わせ、申し込みはファルク(farc@amail.plala.or.jp)、または男女共同参画センター横浜北(045・910・5700)へ。