精神科医療センター/訪問診療

岡山県精神科医療センター/訪問診療を本格化へ 高度な精神科医療提供
2010年5月14日   
 岡山県精神科医療センターは今年度、訪問診療への取り組みを本格化させる。在宅医療の受け皿を充実させることが入院医療を必要とする患者にその機会を提供し、高度な精神科医療の提供につながると判断した。
 同センターの中島豊爾理事長は、「コメディカルのスタッフを増員してきたのも、訪問診療で夜間対応ができる体制をつくるため」と明言する。現在、同センターは看護師153人以外に、作業療法士16人、心理職12人、精神保健福祉士(PSW)17人のスタッフを抱え、精神科に特化した訪問診療をサポートする体制整備に努めてきた。2007年に地方独立行政法人となり、地方公務員の定員枠が外れたこともマンパワーを充実させる追い風となった。
 すでに同センターは、夜間救急などに24時間対応する体制を整備した。ただ中島理事長は、「来院できないケースや話を聞いてもらえば済むようなケースなど、すべてに対応する必要がある」と指摘。「夜間対応を含め、安心感が持てなければ患者は退院できない」と述べた上で、「何かあれば、いつでも飛んでいけるようにしたい」と意欲を示した。
狙いは入院医療の高度化
 中島理事長は、在宅と入院で医療の機能分化が進めば、入院医療も高度化すると見通す。入院医療については、特に認知症への取り組みを重点課題の1つに位置付ける。もともと同センターは公的病院として、民間病院では対応できない分野に取り組む方針だった。周辺には早々と高齢者医療に転換する病院も多く、あえて競合するような事態は避けていたという。
 一方で、中島理事長は「認知症について、今できる最善の医療に取り組むことも必要と考える」と述べ、地域社会のニーズに対応することも同センターが果たすべき役割との見方を示した。
 児童・思春期病棟の存在も同センターの特長の1つだ。ただ、入院患者を地域に戻すためには、長期の見守りを可能とする中間施設が必要となる。同センターには、そのための「情緒障害児短期治療施設」を独自に運営する構想もあるという。
中島理事長「ニーズへの対応が点数に」
 10年度診療報酬改定では、これまで看護師の増員に努めてきたこともあり、13対1精神病棟入院基本料の新設が大きなメリットになった。同センターでは、重度アルコール依存症入院医療管理加算の新設や精神科身体合併症管理加算の増額と合わせ、全体で年間1億円程度の収入増を見込む。中島理事長は「ニーズがあることに取り組んだ結果、今になって点数が付き始めた」と述べた。
 今年4月には、内科医の浮田實氏が同センター院長に就任した。浮田院長は前福山市民病院長で、中島理事長はその経営手腕を高く評価している。ただ、精神科病院の院長に内科医が就任するのは異例のケースだ。
 浮田院長は「違和感があるものは中島理事長にぶつけていきたい。そこからリアクションもあり、お互いの共通項も見えてくる」と指摘。「異文化交流は活性化につながる。触発されれば両方にエネルギーが出て、新しい文化も生まれるだろう」と見通す。一方で「精神科も一般医療もパターンは同じ」と強調。「これまでの経験を今後の病院経営に生かしていきたい」と意欲を示した。